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フランスはパリ五輪開会式をどう見たか?「魔法のよう」絶賛する新聞、「汚らわしい」激怒する右翼…開幕前の無関心→五輪一色の世論を現地報告
text by
広岡裕児Yuji Hirooka
photograph by代表撮影
posted2024/07/30 06:02
エッフェル塔を前にセーヌ川をパレードする日本代表団
これは「woke」なのか?
キリスト教原理主義に近い新右翼出身で大臣経験もあるフィリップ・ドヴィリエは、この場面だけではなく、「すべてが汚らわしく、すべてがwoke(意識高い系左翼、といったスラング)だ」と嫌悪をあらわにした。
また、欧州選挙では叔母のマリーヌ・ルペンのRN(国民連合)に対抗する極右政党から出たマリオン・マレシャル欧州議員は「下品なwoke のプロパガンダ」だとXで批判し、「フランスではなく、どんな挑発でもする左翼少数派が語っているのです」と英語とフランス語で発信した。
たしかに、開会式の演出には多様性がみられた。だが、それはwokeとは違う。ポリティカル・コレクトネスを強要したり、権利を声高にいったりするのではない。フランスのありのままの姿をあるがままに見せただけなのである。
称賛する右翼議員も
聖火の最終点火者はカリブ海の海外県出身の黒人アスリート二人だった。だからといって、とくに称賛されるわけでも非難されるわけでもない。彼らの後ろには次々にリレーした様々な肌の色、老若男女が並んだが、別に特別なことではない。
アヤ・ナカムラと共演した共和国親衛隊楽隊の指揮者は、ラジオのインタビューで「とてもうまくいった。誰もが大喜びでした」と語っていた。レディー・ガガがフランスのアーティスト、ジジ・ジャンメールにオマージュを捧げ、カナダ人のセリーヌ・ディオンがエディット・ピアフの名曲を熱唱する、それでいいのである。
極右政党RNのなかにも、「最も美しいオリンピック開会式」と称賛した国会議員(ブリューノ・クラヴェ)もいるのだ。