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パリ五輪「セーヌ川で優雅な開会式」のウラで…現地で記者が見た“平和とは真逆の現実”「5分おきにパトカーのサイレン」「地下鉄で不審物騒ぎ」

posted2024/07/28 11:30

 
パリ五輪「セーヌ川で優雅な開会式」のウラで…現地で記者が見た“平和とは真逆の現実”「5分おきにパトカーのサイレン」「地下鉄で不審物騒ぎ」<Number Web> photograph by JMPA

エマニュエル・マクロン仏大統領とIOCのトーマス・バッハ会長。パリ五輪開会式の「成功」に満足げな笑みを浮かべる

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齋藤裕

齋藤裕Yu Saito

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JMPA

現地時間7月26日に行われた2024年パリ五輪の開会式。大小85隻の船によるセーヌ川での入場行進は世界中の注目を集めたが、その一方で、パリ市内は「平和の祭典」とはかけ離れた物々しい厳戒態勢が敷かれていた。現地取材した記者が知られざる「開会式のウラ側」をレポートする。(全2回の1回目/後編へ)

歓声を切り裂いた「パトカーのサイレン音」

 セーヌ川を優雅に船で入場する各国の代表選手たち――日本でも生中継された、平和の祭典の華やかな幕開けだ。だが、実際に川沿いで目にした光景は、日本で想像する「平和」とは程遠かった。

 開会式が始まり、出発地のアウステルリッツ橋からギリシャ、難民選手団を筆頭にアルファベットのAから順に船で入場していく。入場する前の選手団の船を見ていくと、アルゼンチン選手団が観客なしでも元気に国歌を歌い出していた。ブラジル選手団も負けじと陽気に声を張る。あわせてカメラクルーの乗った黒色のボートが各国選手団を追尾していく。

 93番目に登場する予定の日本選手団の船は発着場から「入場口」のアウステルリッツ橋へと向かっていた。ケニアやカザフスタンなど他国選手と一緒に乗り込んだのは「バトー・ムーシュ」というクルーズ船。他国の船とすれ違いながら、アルファベット順に整列してセーヌ川を西へと航行を続ける。

 日本選手を乗せた船の横を通り過ぎる他国選手団の船から「コンニチワー」という声がかかる。入場前のエール交換のような交流のひととき。そしていざ入場すると、観客席から大きな歓声を送られる。しかし、その声を切り裂いたのは5分おきに響くパトカーのサイレン音だった。

 空中にはヘリコプターが飛び交い、銃を携えた迷彩服にベレー帽の軍人6人が1組となって川沿いの道を約50mおきに巡回している。セーヌ川周辺に入るためにはチケットかセキュリティコードが必要になる。そのチェックを行う検問所には警察官が10人ほど配置されていて、ダブルチェックならぬ4度にも及ぶ「クワッドチェック」でやっと中に入ることができた。

【次ページ】 記者が実際に体験した「地下鉄での不審物騒ぎ」

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