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高校生から「岡ちゃん」と呼ばれ…岡田武史67歳がFC今治高で“授業”するワケ「富の再配分と直接民主主義…これが生きる道だと俺は思っていて」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakashi Shimizu
posted2024/07/24 17:04
FC今治会長であり、FC今治高校里山の学園長を務める岡田武史。開校3カ月を迎えたFC今治高校での日々を語った
生きた実学を、注ぎ込もうとしている。校則もうるさくなく「命にかかわること、物を壊すこと、人を傷つけること、法律に違反すること、人の成長を妨げること」がなければ、基本的には制限を設けないという。自由ではあるが、好き勝手にやっていいということではまったくない。コミュニティの一人という自覚を持ち、行動に移していくことを生徒に求めている。2年までは寮生活だが、3年生になれば改修した空き家などに住み、地域とのコミュニティを日々実践させていくのもそのためである。
新しいカタチの教育を模索しての果敢なチャレンジ。定員80人としたなかで34人しか集まらなかった現実も理解している。新たな教育の提示を、簡単に受け入れてもらえるとはハナから思っていない。FC今治高からどんな人材を輩出していけるかが、その価値を知らしめることにもなる。空前絶後のプレッシャーにさらされた1997年のフランスワールドカップアジア最終予選にしても、大会前にバッシングが吹き荒れた2010年の南アフリカワールドカップにしても、逆境が似合う人にとっては、これもまたヤル気をみなぎらせる状況なのかもしれない。
岡田は言う。
「富の再配分と直接民主主義。これが生きる道」
「世界は自由か平等か、資本主義か社会主義かってやってきたわけだけど、二律背反ということでもない。資本主義においては稼ぐヤツは稼ぐけど、自分だけが自分の会社だけが良くたって日本が良くなかったら、世界が良くなかったら地球がパンクしたら終わりだよねっていう感覚が広まりつつあると思うんだ。稼いだものを善意に基づいて寄附をしてもらい、再配分していく。それを行政ではなく、民間でやる。コミュニティをつくって衣食住を補完しあう。これを60あるJリーグのクラブと、55あるBリーグのクラブが中心にやっていったらこの国は変われるかもしれないという思いが俺にはあるから。富の再配分と直接民主主義。これが生きる道なんじゃないかって俺自身は思っていて、そのモデルをつくりたい。どこまでできるかは知らんけど(笑)」
各界から授業をやらせてほしいという声、教育界や企業から寄せられる賛同や関心の声も、岡田のもとに届いている。
新しい物事をやるにはエラーというリスクが伴う。でもむしろそれは望むところ。「岡ちゃん」と呼ぶ生徒たちにエラー&ラーンを自ら先頭に立って教えようとしているのだから。