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高校生から「岡ちゃん」と呼ばれ…岡田武史67歳がFC今治高で“授業”するワケ「富の再配分と直接民主主義…これが生きる道だと俺は思っていて」
posted2024/07/24 17:04
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Takashi Shimizu
高校生からは親しみを込めて「岡ちゃん」と呼ばれている。
FC今治の会長である岡田武史が学園長を務めるFC今治高校里山校は今春34人の一期生を迎えて開校し、はや3カ月が過ぎた。
6月とある日の昼過ぎから行なったNumber1100号で掲載する「日本サッカー史上最大の決断~1997年11月16日 日本VSイラン『FW2枚替え』の真実」のインタビューを前に、学園長は学校に赴いていた。アシックス里山スタジアムで話を聞いた後、すぐまた学校に戻るという。
クラブの会長、日本サッカー協会副会長などの業務に高校が加わるのだから言うまでもなく多忙極まりない。こういうときこそ活き活きとするのもまた岡田武史という人ではあるのだが。
主体性をもったリーダー育成が目的
何故、学生から岡ちゃんと? そう尋ねるとちょっと嬉しそうな顔を向ける。
「ウチの場合は先生じゃなくてコーチと生徒に呼ばせていて、じゃあ学園長は?となったから『岡ちゃんでえーよ』と。そこからすぐに岡ちゃんって呼ばれてる(笑)。『学校が最高に楽しい』と俺に言ってくれる子もいるし、俺もやり甲斐を持って(学園長を)やらせてもらっているよ」
サッカー専門校と勘違いされがちだが、まったくそうではない。共助のコミュニティをつくり、これからの時代を担っていく主体性を持ったリーダーを育成していくことを目的とする。
「ロールモデルのない時代が必ず来る。ドバイで洪水が発生したというニュースがあったけど、観測が始まってからそんなケースは過去にないんだからいちいち調べて対処できない。論理的に考えても誰も答えが分からない以上、自分たちで判断していかなきゃいけない。そういうことがこれからいっぱい起こってくる。当然、失敗もあるだろう。エラー&ラーンでやっていける人材を育てていかなきゃいけないという思いが根底にある。もう学科ができるかどうかで人を区別する時代じゃないと俺は思う」
学科試験なしの独特な入試「スタンディングオベーションが…」
入試からして独特である。
学科試験、筆記試験はなく、一般入試は面談、グループワーク、プレゼンテーションなどで選考する。岡田はあるエピソードを教えてくれた。