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「悔しいけど…俺は“ウサギと亀”の亀だった」香川真司(35歳)が明かす17歳のルーキー秘話「俺は陰の方で、なるべく目立たないように」
posted2024/07/20 17:00

2023年に12年半ぶりにJリーグ・セレッソ大阪に復帰した香川真司(35歳)
text by

ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Asami Enomoto
発売中のNumber1100号[独占インタビュー]香川真司「どんな道でも正解だよ!」より内容を一部抜粋してお届けします。
12年半ぶりのJリーグ復帰「不安があって…」
「Jリーグに戻ると決めるまでは、今までで最も大きな葛藤がありました。やはり、ヨーロッパでチャレンジしたい気持ちはあったから。ただ、当時の状況で、欧州5大リーグ以外でやる気持ちには、なかなかなれなくて。それでも、サッカー選手としてプレーしていくために決断しました」
2023年初め、香川真司は約12年半ぶりにJリーグに復帰した。過去にはヨーロッパの強豪クラブを渡り歩き、日本代表では10番を背負い世界と戦った。誰よりも高いレベルでプレーすることにこだわってきたからこそ、海外の地を離れることは、大きな決断だった。
「開幕戦のためにヨドコウ(桜スタジアム)へバスで向かっているときにもまだ、言葉で表せないような感情に包まれていました。12年半前に一度、大阪から旅立っているわけで。違和感や不安があって……。まぁ、不安の方が大きかったかな」
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慣れ親しんでいるはずのスタジアムに向かう道中、香川は葛藤と不安を胸に抱えていたという。
「スタジアムに入るときに大勢のサポーターの姿が見えて、試合前ピッチに出たときには彼らの大声援が聞こえてきて。『よし、ここでやるぞ!』と腹を決められた。そこからは不安もスッと消えましたね」
この時期はまだ、手術を受けた足首への電気治療を毎日2~3時間受けていた。朝起きて食事をし、身体のケアをして練習に臨む。昼食後には長い治療を受け、また食事をして、眠る。週末の試合へ向け、そんな日々の繰り返しだった。不安がないと言えば強がりにも聞こえるが、これまでもそうして決断してきたサッカー人生だった。
結果的に昨シーズンはリーグ戦全試合でピッチを駆け抜けた。33歳から34歳にかけて戦ったシーズンで、キャリア初のリーグ戦全試合出場を果たした。手術後のシーズンだったのにもかかわらず、だ。
“3人目の祖父”の言葉「サッカーに集中しろ!」
最近は、サウナや交代浴で自律神経を整えて、翌日の練習に向けて質の良い睡眠をとる毎日だ。歴史ある銭湯では、35歳の香川も一人の若者となる。