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「ポイチ、お前のことを信じているヤツいるから」批判された森保監督に岡田武史が送ったシンプルなアドバイス「結局、誰が責任取るのって…」
posted2022/03/29 17:02
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Getty Images
もう14年も前になる。
南アフリカワールドカップ・アジア3次予選第2戦、アウェーのバーレーン戦に敗れた岡田武史監督は、自分を「許せない」と表現した。最終予選前のラウンドで敗れたのは実に19年ぶりという屈辱だった。
随分後になって、このときの話を聞いたことがあった。
「自分が本当に腹をくくったチャレンジというものをしていなかった。引き分けなら仕方がないと思っていたけど、まさか負けるなんて思ってもみなかった。負けたときは冗談じゃねえよ、と思ったよ。でもそこから苦しんで苦しんだからこそ、初めて見えてくるものがあった」
「いいか、W杯予選というものは何回かヤマが来る」
踏襲していたオシムジャパンの流れと完全に決別を図って、メンバーを入れ替えた。戦術の基本コンセプトを提示して、己のやり方を徹底させた。そして次に控えていたホームのオマーン戦を前に、選手たちにこう力説した。
「いいか、W杯予選というものは何回かヤマが来る。次のオマーン戦が一番の大きなヤマ。もしこれを乗り越えることができたら、俺はワールドカップに行けると思っている」
その先にある最終予選を含めても、最も大事な一戦だと位置づけた。勝負師としての勘だった。
「オマーン戦は全体の流れのなかで大きな転機になり得ると思えた。そのために自分もリスクを冒すチャレンジとして、遠藤(保仁)をボランチに下げて長谷部(誠)と並べた。それまでの自分のサッカー観では攻撃的なボランチを2枚並べることなんて考えられなかった」
この試合に3-0と快勝して、そのまま順調に最終予選も突破していく。結果的に岡田の読みどおりの展開になった。
アジア予選には最大のヤマ場がある。そこを乗り越えられるかどうか――。