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「これ動かしていいですか?」日本代表DF伊藤洋輝がインタビュー中…コップとコースターで熱弁「ヤットさんからも学べた」頭脳のナカミ
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/07/17 11:06
伊藤洋輝はインタビュー中、コップやコースターを駆使してビルドアップ時の考えを明かしてくれた
「センターバックでは、中盤にいるときより余裕を持って蹴れるので。だから『どれくらい深い位置までボールを届けられるか』、『ピッチの対角線上にある右サイドの奥にどれだけパスを通せるか』などを意識しながらやっていました。J1に昇格できなかったのは悔しかったですけど、個人的にはすごく貴重な時間だったというか……。
あの時期がなかったら、上まで行けなかったと思います!」
そして、フベロ退任直後の2020年10月、あの遠藤保仁が来たことで、さらに多くのものを得られた。
「ヤットさん(*遠藤の愛称)が来て、ボールを持ちながら短い距離感でつないでいくことを、学べたというか。ヤットさんはピッチでどう回すかを考えていて。『相手をどうやって食いつかせるか』とか『パスをどこにつけたら、どのエリアが空いてくるか』などが見えている感じでしたから。基本的には、今の自分が意識している3人目でフリーを作るという構造をヤットさんはその当時から理解していたんでしょうね」
このプロセスと似たことがシュツットガルトでも起きた。
最初の2シーズン、残留争いを強いられながら、ロングフィードを磨きつつ、守備について学んだ。そして、3シーズン目に、〈3人目の選手〉に良い形でボールを持たせるにはどうすれば良いのかを考え、学び、実践していった。
バイエルン重鎮「イトウはハングリーな選手だ」
ドイツへ来た時点でJ1ではわずか3試合しか出場していなかった伊藤が、シュツットガルトでは初年度から定位置をつかみ、4年目でバイエルンに求められる選手になった。
端からみればシンデレラストーリーに見えるかもしれないが、求められる仕事が変化していくなかで、期待に応えて進化してきたからこそ、今があるのだ。
「伊藤は背が高く、アグレッシブで、左利き。素晴らしいパスが出来て、左サイドバックもセンターバックもできる多彩な才能の持ち主だ」
そう話すのは、バイエルンのクリストフ・フロイントSD(スポーツディレクター)で、ピッチ上の能力を評価している。
さらに興味深いのは、フロイントの上役にあたるエベールの言葉だ。エベールは、伊藤のパーソナリティを高く評価している。
「伊藤はハングリーな選手だ。入れ替え戦にまわってプレッシャーに打ち勝ってきたしね。そして、ファンタスティックなエネルギーを持っている。彼は我々のリストに長く入っていたのだよ」
選手編成の責任者であるエベールがそう考える理由は、どこにあるのか。
これまであまり日本で報道されてこなかった伊藤のキャラクターに迫ると、その魅力が見えてくる――。
<つづく>