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「眉毛? 隠せないですから」“優等生じゃない大器”バイエルン伊藤洋輝「あ、俺は大丈夫です」サウナを断られた原口元気が大化けを予言した日
posted2024/07/17 11:07
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
S. Mellar/FC Bayern,Getty Images
まつげと眉毛…「そもそも隠せないですから」
伊藤洋輝について語るとき、しばしば話題にあがるのが、尋常性白斑についてだ。右のまつげと眉毛は今も白くなっている部分がある。ただ、病気の存在は伊藤にとってタブーではない。
「そもそも、隠せないですから。見たらわかるでしょうし。何とも思っていないというのが正直なところです」
小学3年生のころに発症した。眉毛かまつげか、先に症状が出たのがどちらだったのかは覚えていない。初めは「少し、かぶれているかな」という感覚だった。ただ、日に日に進行して、頬のあたりまで白くなった。そこから通院をして、塗り薬を中心に治療を受けた。頬のあたりはほとんど症状が見られなくなり、眉毛やまつげは現在と同じような状況になった時点で「これ以上は良くならないかもしれないな」と考えて、通院はやめた。「気にしていない」というのは偽りのない本音だ。
ただ、浜松ですき焼きを食べにあるお店に入ったとき、店主から思わぬ声をかけられた。
「うちの息子も髪が白くなって、苦しんでいて……。それでも活躍している伊藤選手はうちの子の希望なんです」
また、同じ病気で苦しんでいる人やその親から手紙をもらったこともこれまでに何度かある。
ただ、伊藤は優等生として振る舞うつもりはない。
「病気のある僕が活躍することで、『誰かに元気を与えたい』とまで立派なことは考えていないんです。あえて言うなら、『ありのままでいいじゃないか』と考えているくらいで。個人的には、気にしすぎないこと、ストレスを感じすぎないことが一番大事なのかなと考えています」
それは伊藤の偽らざる本心からの言葉だ。ただ、そういう考え方が、日本と異なる環境で活躍する上で活きたのは間違いない。
大事なのは、気にしないようにすることですよね
日本と海外では「普通」の基準が異なることもよくある。2023-24シーズンのシュツットガルトであればベンチ入りしたことのある選手の国籍は13カ国で、ドイツ以外の国籍を持つ選手が18人いた。その国の数だけ「常識」は存在する。
加入当初の伊藤には、少しだけ気になることがあった。