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「これ動かしていいですか?」日本代表DF伊藤洋輝がインタビュー中…コップとコースターで熱弁「ヤットさんからも学べた」頭脳のナカミ
posted2024/07/17 11:06
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Hideki Sugiyama
伊藤洋輝とバイエルン・ミュンヘンのヴァンサン・コンパニ新監督は、一本の線で結ばれている。
かつてバイエルンで指揮を執っていたジョゼップ・グアルディオラの推薦を受けたことでコンパニに白羽の矢が立った。そんな新指揮官はポゼッションサッカーを志向している。
一方で伊藤はポゼッションサッカーで結果を残した実績がある。だから、2024-25シーズンのバイエルンにおける新加入選手第1号となったのだろう。
伊藤が徹底して考えた「3人目をいかに使うか」
伊藤が新生バイエルンで重要な役割を担える――そう判断された背景を説明しよう。
2023-24シーズンのシュツットガルトは、ブンデスリーガのなかでポゼッションへのこだわりが最も強いチームだった。ボール支配率はバイエルン、レバークーゼンに次ぐ3位。衝撃だったのは、昨年12月のバイエルンとの一戦だった。バイエルンのホームゲームだったにもかかわらず、シュツットガルトがボール支配率58%と圧倒。ドイツ中が驚いた。
だから、そんなチームのディフェンスラインの中心で、貴重な左利きである伊藤に白羽の矢が立ったのは実にロジカルなのだ。
「引きつけて出す」
この1年間、クラブで何を学んできたのか聞かれる度、伊藤はこのキーワードを何度も口にした。
伊藤がこの1年で徹底して考えてきたこととは何か。
「3人目の選手をいかにして使うか」
一言で表現すると、そうなる。
コップとコースター、ペンを駆使して解説を…
「自分のチームがボールを持ったときに何を考えているのかを教えてもらえませんか?」
そんな問いかけを受けて、伊藤が説明を始めた。こちらが懸命に理解しようしているのを見て、イメージできるようにと気を使ったのだろう。「これ、動かしていいですか?」といった具合に、途中からはテーブルの上に用意されたコップとコースター、そしてペンを駆使して、解説を進めていった。
今回のインタビューで初めて、伊藤の頭脳が明かされた。
「ビルドアップでは、相手チームのどの選手が、どこからプレスに来たのかを、常に見ています。例えば、ある選手がプレスをかけに来たら、その前にマークされていた味方選手がフリーになることが多い。あとは、そのフリーになった選手にどうボールを持っていくかですよね」
具体例を挙げよう。伊藤のチームがゴールキックからスタートして〈4-4-2〉の形でビルドアップしようとする。相手も〈4-4-2〉の形で前線からプレスをかけてきたとする。
そこでキーになるのが、慌てずにボールを持ちつつ、GKを上手く使うことだ。