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「慶応は本当強かったですよ」横浜高校監督がホンネで語る23年夏・慶応戦“あの判定”と敗因「選手も人生をかけて戦っていますから」
text by
大利実Minoru Ohtoshi
photograph byAsahi Shimbun
posted2024/07/08 11:00
2023年神奈川大会決勝、慶応に敗れて涙する横浜高校ナイン
「緒方がこれまで見たことがない落ち込み方をしていて、緒方の名誉を回復するためにも、思っていることを率直に伝えさせてもらいました。監督も選手も、人生をかけて戦っていますから」
プロ野球のような「リクエスト制度」がない以上、審判の判定は絶対であり、抗議によってジャッジが覆ることはまずない。試合終了後となれば120パーセント、判定は変わらない。それをわかったうえでの行動だった。
本当に強いチームなら「9回裏」に…
ただ、負けた原因はこのワンプレーだけではないことも、十分に理解している。序盤には守りのミスが失点につながっている。本当に強いチームであれば、9回裏の攻撃でもう一度、スイッチを入れることもできたであろう。
「いつもであれば、逆転されたあとでも、『もう1回攻めるぞ!』となるんですけど、あの9回裏に関してはならなかったんです。一度変わった“流れ”を食い止めることができなかった。お客さんの力、スタンドの雰囲気……。全国制覇するには、あの劣勢からもう一度ひっくり返せるチームを作らなければいけない。そこは、監督として非常に勉強になった試合でした」
慶応義塾が日本一を成し遂げただけに、余計に悔しさが募る。
「慶応は本当強かったですよ。個々の能力が高い。日本一になったことは、神奈川の人間として嬉しさと同時に、悔しさも当然あります。キャプテンの大村(昊澄)くんのチームをまとめる力が素晴らしく、そこも強さのひとつだったと感じます。うちの選手には、WBCで優勝した侍ジャパンを例に出しながら、『夏はチームワークのある学校が絶対に勝つぞ』と言っていたんです。うちも春から夏にかけてチーム力が上がっていて、手応えを持って夏に入れていました」
「俺がやる」のメッセージを込めた中で
春は、準々決勝で相洋にタイブレークで敗退。その翌週、キャプテンの緒方は『俺がやる』というメッセージを三塁ベンチ内にあるホワイトボードに書き込んだ。
「ひとりひとりが、『自分がやってやる!』という強い気持ちを持って、リーダーシップを発揮してほしい」
緒方の言葉に呼応するようにチームはいい方向に進んでいき、夏の準々決勝では相洋にリベンジを果たしたが、最後の1イニングで甲子園を逃す結果となった。
<つづく>