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今季2勝目の小椋藍がMoto2タイトルにこだわる本当の理由と、アライユーザーなのに「MTヘルメット」チームで走れるわけ《来季のMotoGP昇格は?》
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2024/07/03 17:00
伝統の一戦オランダGPのMoto2クラス決勝レースでトップを走る小椋。このまま逃げ切って今季2勝目を挙げた
来季はホンダでのMotoGPクラス参戦が噂されているが、現時点ではMoto2クラスで戦う可能性が高い。2年前にMotoGPへのスイッチが取り沙汰されたときも「チャンピオンを獲ったらMotoGPにチャレンジすることも考える」と語ったが、それはいまも変わっていない。小椋は現在の心境をこう語る。
「Moto2のタイトルがあれば、ほかはどうでもいいというのが正直な気持ちです。だからチャンピオンを獲らないと先のことはなかなか考えにくいし、タイトルを獲らずにMotoGPにあがっても……いつか引退したときに自分はどう思うのだろうって考えてしまう。自分自身、タイトルの可能性があるのはMoto2だと思っている。(250cc単気筒のエンジンの)Moto3は大混戦の中でのスリップの使い合いや運不運など、ライダースキル以外の要素が多くて自分的には簡単じゃないし、それは1000ccのMotoGPも同じ。だから、Moto2にこだわっているのかも知れない」
Moto2クラスは、トライアンフ製765cc3気筒エンジンを3メーカー(カレックス、ボスコスクーロ、フォワード)の車体に搭載し、Moto3やMotoGPに比べて「イコール」に近いコンディションで戦われる。だからこそ、小椋はこれまで「Moto2で0.2秒は決定的な差」と語ってきたが、今年はタイヤメーカーが変わり、さらにライダースキルが問われるようになった状況を「楽しい」と感じている。
チャンピオンの条件
過去の小椋は16年のアジア・タレント・カップでわずかの差でタイトルを逃し、20年のMoto3クラスでも最終戦決着の末、総合3位。22年のMoto2クラスでも2位に甘んじたが、今年は再びチャンスが巡ってきた。これまでどうしてチャンピオンになれなかったのか。チャンピオンになるためには何が足りなかったのか。小椋はこう語った。
「チャンピオンに必要なものは速さですね。グランプリに来る前もMoto3とMoto2でチャンピオン争いしたときも、自分には速さがなかった。いいときもあったけど、1年を通しての速さがなかった。ポイントを積み重ね、相手のミスもあってチャンピオン争いをしてきたけど、結局ダメだった。だから今年は最初のセッションからタイムを出していこうと思ってやってきた。それがなかなかうまくいかなくて、特に15分間の予選ではミスにつながり、これまで経験したことがない予選17位という最悪のグリッドが3戦も続いた。それが今回やっとうまくいきました」
今年は3度目の正直となるのだろうか。小椋は19年にホンダの育成ライダーとしてグランプリに参戦し、23年を最後にホンダ・チーム・アジアを卒業した。今年はプロのライダーとして独り立ちしたが、今季所属のMSIに来季残る条件は「ヘルメットを変えること」なので、現在のチームに残ることはない。来季はMoto2なのかMotoGPなのか。そして、どこのチームで走ることになるのか。小椋の決断の時が迫っている。