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「日本人は自分の長所をわかっていない」日本とアメリカの学生スポーツ何が違う? バスケ初NCAA日本人コーチ「動画どんどん送るべき」
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byL:Getty Images /R:Asami Morita
posted2024/07/01 11:01
左:史上初めて視聴者数が男子決勝を上回ったNCAA女子決勝。右:NCAA2部ウェストミンスター大で女子バスケチームのヘッドコーチを務める森田麻文(39歳)
「例えば、ディフェンスを頑張って、パッシングレーンでスティールしてオープンレイアップに行くのが得意ということであれば、そのパッシングレーンをディナイして、スティール取ってレイアップに行くまでの過程を見せてほしい。(スティールした後の)トランジションのオープンレイアップばかり15分見せられても、『何を見ているんだ』って思うわけですよ。そんなものを見たいわけじゃない。それより、どうやってレイアップに持って行っているのかを見たい」
外からのシュートが得意な選手の場合も同様だ。
「スリーポイントが入るんだったら、打っているところじゃなくて、打つまでの過程を見たい。スクリーンをちゃんと使ってポップアップしてスリーを打っているとか、トランジションで走って打っているとか、スリーポイントを打つまでの過程のバリエーションは見たい。別にシュートが入るところだけを見たいわけじゃない」
動画の長さも注意だ。長ければ見てもらえるわけではない。むしろ、長さを敬遠して、見てもらえないことも多い。だから、短い中にどれだけ詰まっているかが大事になる。
「できれば1分半ぐらいで何ができるかをまとめてほしい。見る側としては、1分半だったら見てみようと思うけど、5分間同じプレーを見続けるということはないわけで。ハイライトは大体30秒ぐらいで見るか見ないかが決まりますね。30秒見ていいなと思って、1分半見て、これならフルゲーム見ようかなと思う子と、いやもう絶対無理だって思う子とに分かれます」
渡邊、八村、富永…簡単な世界ではない
もうひとつの注意点は、ハイライト場面の集め方。いいプレーをできるだけ多く見せようと、シーズン通して多くの試合から寄せ集めるよりも、1~2試合から作られたハイライトのほうが見ていて説得力を感じるという。
「シーズン通して違う試合から集めてきたら、どんなに悪い選手でも、そこそこ、いいハイライトができるんですよ。同じ試合からいいハイライトが作れるかどうか。1つの試合から作られたハイライトなら、同じ試合でこれだけできるなら説得力があって興味をそそられるけれど、シーズン通していろんな試合から集めたハイライトを見ても信用度が低いんです」
まずは自分を知ること。そして、自分のどんな部分を、どうやって見せたら説得力があるのかを相手の立場にたって考えること。これは、NCAAでプレーしたい高校生選手に限らず、新しい世界に飛び込もうとする様々な人たちにとっても参考になるアドバイスではないだろうか。
NCAAは決して簡単な世界ではない。それでもプロと比べて選択肢の幅が広い一方で、高いレベルの中で揉まれることができるのがいいところだ。渡邊雄太や八村塁、富永啓生のように世界を目指す選手たちには、自分に合うチーム、環境を見つけ、うまく売り込むことで成長のきっかけをつかんでほしい。