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大谷翔平の“本当のスゴさ”は本塁打ではなく…監督とチームメイトが絶賛した“ただのヒット”を分析して判明した事実「あのプレーがなかったら…」
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2024/06/24 17:04
絶好調の6月を過ごしているドジャースの大谷翔平
代打ヘイワードの満弾で8対9。1死走者なしで1番・大谷に打順は回った。勝利のためにはあと2点、最悪でも1点が欲しいところ。すべき仕事は打者の能力により異なるが、大谷ならば本塁打、安打、四球、この場面で求められるすべての仕事を遂行することが出来る。カウントは1−1。ここで彼は出塁を前提としたアプローチを見せた。
救援右腕ポドニクが投じた低めのチェンジアップに対し、バットヘッドを遅らせ逆方向を狙った。一塁ベースを回った大谷が何度も両手を叩いている。その姿は昨年3月のWBC準決勝・メキシコ戦を彷彿とさせた。1点ビハインドの9回に先頭で右中間二塁打を放ち、両手を上げチームを鼓舞したあの姿だ。
2死後、フリーマン敬遠、決勝3点本塁打を放ったヘルナンデスは言った。
「ジェイソンが本塁打を放ち大谷に回した。彼は出塁するためにバトルし、後ろへと繋げた。だからなんとかしたかった」
「ショウヘイは決して本塁打を狙おうとしなかった」
この大谷の左前打について、後日、ロバーツ監督に話を聞いた。指揮官は熱弁を繰り返した。
「あの場面、彼ならば本塁打、四球、安打での出塁、なんでも出来た。だが、決して彼は本塁打を狙おうとしなかった。攻撃を繋げようとしていた。これはチームメートを信頼し、チーム全員で攻撃しようとする意思表示なんだ。こういうアプローチは選手やダグアウトに伝染する。そして、テオスカーが本塁打で決めた。大谷が見せたアプローチこそ、チームの勝利を最優先に考えた『ウイニング・アプローチ』。ラインナップを『線』として捉え、攻める。素晴らしいものだった」
指揮官はさらに日々の大谷の献身的な打撃のアプローチも褒め称えた。
「彼は良いチームメートとしてプレーすることを理解している。彼は17日の試合でも9回に二ゴロを放ち走者を三塁に進め、その後の犠牲フライを呼んだ。あのプレーがなかったら、我々はあの試合で勝てなかったかもしれない。彼はチームが勝つために、小さなことであっても、しなくてはならない仕事をしっかりやっている。ドジャース野球の真髄とは、1球1球を大切にし、小さなことをコツコツと積み上げていくことなんだ。翔平はそれを良く理解し、実践してくれている。彼は『ウイニング・アプローチ』を理解した『ウイニング・プレーヤー』なんだ」