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「クソ悔しい」石川祐希も指摘した宮浦健人の“消極的なプレー”…それでも、“背番号4”に期待してしまう理由「パリで目撃した限界突破の筋トレ」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2024/06/08 17:02
試合後のミックスゾーンで自らの物足りなさを嘆いた宮浦健人(25歳)。静かに燃える男は、もう一皮剥けるために模索している
日々自分の限界を突破すべく、挑む。象徴的な姿を見たのはパリでの取材時だった。
午前と午後の2部練習が行われた日の朝。「朝、苦手です」と苦笑いを浮かべながらも、ジムの空いたスペースにバーベルを運び、黙々と挙上を繰り返す。
与えられたメニューが中盤に差し掛かろうかという頃、「何キロ?」と聞かずとも見るだけでわかる重量のバーベルにセットした。屈強なチームメイトたちも「あれを上げんの?」と驚きの表情で見つめる中、フルパワーとフルスピードで4回もトラップバーを用いたデッドリフトを行い、ふーっと息を吐いた。
この日は140キロから始め、徐々に145、150と5キロずつ重りを増やし、最終的には150キロを2セットこなした。重さに目が行くが、狙いはむしろ「どれだけの重さを挙げるか」ではなく、その重さを「どれだけ速く上げられるか」。バーベルを持ってから引き上げるまでの時間を0.85〜0.95秒に定め、バレーボールのジャンプに直結するトレーニングであることを意識しながら取り組んでいた。
「プレーの1つ1つを可視化して、どこがどれぐらい成長したかを表すのは難しい。でもウエイトトレーニングに関しては、数値で可視化できるので、そこで結果を追って行く。自分で機械を買ったので、アプリと連動させて、毎日の数値がデータとして蓄積されるんです。目に見えれば、効率的に成長を実感できるし、それが正解か、正解じゃないかはわからないですけど、自分には合っているやり方だと思って続けてきました」
チームや施設が所有するような本格的な機器を個人で持つ選手はおそらくほぼいない。
「やりすぎって言われるんですよ。でも自分の性格上、やると決めたらやらないと。気持ち悪いんで(笑)」
やる、と決めたらやる。
今はそびえ立つブロックに「止められた悪いイメージが残る」とうなだれながらも、この壁をどうすれば打ち破れるか、を考える。これまでも何度も困難と直面しながら自分を信じて打ち克ってきた。
「いっぱい悩んで、いろんなことを吸収しながら成長していく。“やれる”という自信はあるし、もっともっと、強くなれれば解決できると思うので。力不足を感じながらですけど、それが自分の糧になっていると思って、まだまだ。もっと頑張ります」
迷いなど打ち消す一本を、自らの左手で――。
会心の一打を噛みしめるように、見せるのは決して派手ではないガッツポーズ。静かに握りしめた右手に、溢れんばかりの闘志を込める。
その姿こそ、何よりカッコいい、皆が見たいと待ち望む「宮浦健人」の姿だ。