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「クソ悔しい」石川祐希も指摘した宮浦健人の“消極的なプレー”…それでも、“背番号4”に期待してしまう理由「パリで目撃した限界突破の筋トレ」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2024/06/08 17:02
試合後のミックスゾーンで自らの物足りなさを嘆いた宮浦健人(25歳)。静かに燃える男は、もう一皮剥けるために模索している
「クソ悔しいです」
5月21日に開幕したVNLのブラジルラウンドを終えたあと、宮浦はこちらが想像した通りの言葉を口にした。
アルゼンチン、セルビア、キューバに3連勝。4戦目でイタリアに敗れはしたが、五輪出場を懸けてベストメンバーで臨んでくる相手に対して日本は3勝1敗という好スタートを切った。宮浦個人に目を向けても、最初の2戦は2枚替えで投入されると直後にスパイクを決めて期待に応えた。スタメン出場してイタリア戦ではチーム最多の20得点を叩き出している。
果たすべき役割は十分果たしているように見えるが、満足どころか「クソ悔しい」。理由は、宮浦自身が一番わかっていた。
「まだまだ自分の力不足を感じました。今、調子は悪くないんですけど、自分にやれることを100%出したかというと、まだまだ。もやもやするような感じだったし、試合に出て結果を出せないのはただ自分の力不足なので。試合の中でも相手に対応して、解決策を生み出す。対応力が大事だと思っています」
問いかけに頷きながら「うーん」とか「なんだろうな」と前置きしながら飾り気のない言葉で感情を表現する。その中で何度も繰り返したのが「力不足」という言葉。ブロックしたかった。もう少しできた。そう、時折苦笑しながら悔しさをにじませた。
転機となった海外挑戦「西田だけじゃない」
高校バレーの名門・鎮西高でエースとして活躍。同校の畑野久雄監督が「とにかくミスをしない選手」と称える抜群の安定感を武器に、学生時代からアンダーカテゴリー日本代表に選出された。アタッカーとしての実績、実力は右に出る者はいない。しかし、先に世界へ名を馳せたのは1歳下の西田だった。
2021年、危機感を募らせた宮浦は、さらなる成長と進化を求めてポーランドへ渡った。チームでは2番手のオポジットとして出場機会は限られたが、2枚替えやサーブでアピールを続け、練習時にも「100%の力を出し切った」。その言葉が真実であることを、これ以上ない形で発揮したのが昨年のネーションズリーグだった。
不調の西田に代わりスタメン出場を重ね、ブラジルやイタリアといった強豪国から勝利を奪った。日本のオポジットは西田だけでなく宮浦もいる――その名を世界に轟かせた。昨季はフランスのパリ・バレーに移籍し、全試合出場。得点源としてチームの主軸を担うまでに成長した。