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「クソ悔しい」石川祐希も指摘した宮浦健人の“消極的なプレー”…それでも、“背番号4”に期待してしまう理由「パリで目撃した限界突破の筋トレ」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2024/06/08 17:02
試合後のミックスゾーンで自らの物足りなさを嘆いた宮浦健人(25歳)。静かに燃える男は、もう一皮剥けるために模索している
活躍ぶりに加え、寡黙で自惚れとは程遠い実直なキャラクターはファンの心を掴んだ。内に秘めた闘志と、いついかなる時に出番が巡ってきても準備を重ねた成果を発揮する仕事人ぶりが注目され、知名度は一気に急上昇。タオルやTシャツなどのグッズも昨年以上に多く展開され、あっという間に完売した。
実際に、福岡会場には宮浦の「4番」の応援Tシャツを着る人の数が明らかに増えた。宮浦自身は「数が少なかったから完売しただけ」と笑うが、紛れもなく、人気・実力共に日本を代表する選手の一人となった。
厳しくなる宮浦へのマーク
ステージが上がれば、注目度も上がる。当然それはファンだけでなく、ネットを挟んで対峙する相手も同じ。宮浦に対する警戒は厳しさを増した。被ブロックの本数もその表れでもあるのだが、それを越えられないことこそが「力不足」と自らに矢印を向ける。
「去年のVNLと比べてどれぐらいか、ハッキリはわからないですけど、ブロックのプレッシャーや圧は間違いなく感じます。相手が自分に対して対策してきているのに対して、どうしようと迷いが生じてしまって、苦しいところで決められなかった。でもそこで決めないと力不足だし、もっともっと先、トップになるためには通らないといけない道なので。もう1つ、殻を破らないといけない、と思っています」
ポーランド戦はまさにその課題が突き付けられた。序盤から立て続けにブロック失点を喫したことで、消極的になった。この日、“セカンドリベロ”としてベンチにいた石川祐希は試合を見ながら時折、アドバイスを送っていた。指摘は宮浦自身が考えていたことと同じだった。
「リバウンドを取りに行く時にジャンプが低くなっていたので、通過点が低いし、相手もその時点で『リバウンドだ』とわかる。1セット目が終わった時に、まずはしっかりジャンプして高い位置でリバウンドを獲るのか、打ちに行くのかという判断をするように、ということは伝えました。選考もかかっているプレッシャーがあって、さらにポーランドからも攻撃される。難しい状況であるのは間違いないですけど、それでもやらないといけない。消極的になっていたのは事実だと思うし、そこで普通に振る舞えたり、もっとアグレッシブに戦えないとオリンピックでは勝てないと思うので。そういった面で、1つ、いい経験になったと思います」(石川)
躍動した昨年のネーションズリーグと比べ、苦悩の時間は続く。だが、それすらもきっと力に変えて、強くなる。そんな期待を抱けるのは、宮浦がこれまで証明してきたことを知っているからだ。