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バレーボールPRESSBACK NUMBER
「ここは俺にあげろや!」高橋藍が怒声を浴びせた相棒セッターの選択…敵将も舌を巻いた驚愕プレーとは「あの上から打たれたら打つ手がない」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYohei Osada/AFLO
posted2024/06/07 11:06
東山高校時代の高橋藍。キャプテンとして春高バレーでチームを全国制覇に導いた
東山は初戦の前橋商戦から試合を重ねるごとに調子を上げていった。ただ、準決勝からは高校生にとってほぼ経験したことがない“5セットマッチ”。独特の高揚感や興奮も相まって、知らぬ間にフィジカルにダメージを受けるため、準々決勝、準決勝と進む頃には疲労もピークに達し、ほとんどの選手が疲弊していく。しかし、高橋だけは別次元にいた。
圧巻は、駿台学園との決勝戦。197センチの伊藤吏玖と188センチの金田晃太朗という大会屈指のツインタワーを意に介さず、高橋はその高いブロックの上からスパイクを打ちつけた。しかも、試合の序盤ではなく、2セットを連取した後の第3セットでのプレー。驚異的とも言える会心の1本に、敵将も「あの上から打たれたら打つ手がない」と舌を巻いた。
悲願の全国制覇から急ピッチで駆け上がる高橋藍
この大会、東山は「失セット0」という快挙と共に、初の全国制覇を成し遂げた。 時に仲間と衝突しながらも叶えた夢。有言実行を体現してきた高橋にふさわしい高校ラストゲームだった。
ただ、ここから急ピッチで駆け上がることは、まだ誰も知る由もない。当時の高橋に声をかけるなら何と言おうか。「君、もうすぐ日本代表に入るよ」「来年の東京五輪に出るよ」と言っても、信じてもらえないだろう。しかも、その後すぐに世界最高峰のイタリアへ渡るなんて、誰が想像できるのか。
わずか4年で世界は激変した。
<前編から続く>
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