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大谷翔平もイチローも「英語ペラペラなのにナゼ通訳が必要?」NY在住の日本人記者が心を痛めた“外国人の失言”「息子の誕生日に無情クビ通告」
 

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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posted2024/06/05 06:00

大谷翔平もイチローも「英語ペラペラなのにナゼ通訳が必要?」NY在住の日本人記者が心を痛めた“外国人の失言”「息子の誕生日に無情クビ通告」<Number Web> photograph by Getty Images

ウィル・アイアトン通訳(右)を言葉をかわす大谷翔平。メッツ右腕ロペスの失言と戦力外通告は、異国の地で生活する人たちにとっては他人事ではなかった

 スムーズに日常会話はできるくらいの英語力がある人でも、取材される側になり、複数の記者から浴びせられる質問をその場で考え、的確に答え続けるのは簡単なことではない。特に試合後の興奮状態であれば、それはなおさら。結果が良くなかった直後など、不用意なことを言ってしまう選手がいても驚かない。発言への注目度が大きかったイチローが、すでに十分な英語力がありながら、選手生活の最後まで通訳を付け続けた理由の一端をそこに見出すこともできる。

 母国からだけではなく、今ではメジャー全体で最大の注目度を得るようになった大谷もそれは同じだろう。一平事件の後、同僚たちとは自らの言葉で接する機会が増えたと伝えられているが、公の場では今後も通訳を使い続けるのではないか。ロペスの事件があった後で、誤解されるリスクとストレスを回避するという意味でも、その姿勢、方向性はより理解されていくのだろうと推測できる。

ニューヨーカーは気の毒に感じている

「彼があのように反応したのは残念だった。自身が言ったことが誤解され、注目を集めてしまったことを気の毒にも感じる」

 ロペスが戦力外通告を受けた翌日、いつも思慮深い2019年の本塁打王、メッツのピート・アロンゾ内野手が残したそんな言葉は胸に響いてくる。

 前述通り、退場後のグローブ投げは恥ずかしい行為だが、それだけで職を失うほどの悪行だったとは思わない。あの日の運命的なメディア対応が行われなければ、ロペスはまだメッツのユニフォームを着ていただろう。

 メッツが本拠地を置くニューヨークは、世界中から集まった様々な人種がそれぞれのコミュニティを作り、助け合いながら生きている“人種の坩堝”でもある。そこでは自身が声を挙げさえすれば、大抵の場合、様々な助けが得られる。責任の所在が本人か、チームかはともかく、本来なら得られていたはずのヘルプを得られず、チームを追われることになったロペスを気の毒に感じているニューヨーカーは多いのではないだろうか。

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