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大谷翔平もイチローも「英語ペラペラなのにナゼ通訳が必要?」NY在住の日本人記者が心を痛めた“外国人の失言”「息子の誕生日に無情クビ通告」
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2024/06/05 06:00
ウィル・アイアトン通訳(右)を言葉をかわす大谷翔平。メッツ右腕ロペスの失言と戦力外通告は、異国の地で生活する人たちにとっては他人事ではなかった
事件後も盛んに報道されたが、ロペスはミネソタ・ツインズに所属していた昨季中、メンタルヘルスの問題で負傷者リスト入りした経験がある。また、11歳の息子が“家族性地中海熱”という生まれつきの難病を患っており、息子の誕生日でもあった5月29日は精神的に辛い状態でマウンドに立っていたとも伝えられている。
それらの背景から冷静に話せる状況でなかったのであれば、そもそも試合後も無理にメディア対応をする必要はなかった。質疑応答が避けられないのだとすれば、通訳か、あるいは英語&スペイン語に堪能なチーム関係者の助けを借りてもよかった。“ロペス自身が通訳なしの対応を望んでいた”というチーム側の言い分は理解できるが、今回に限っては例外として介入してもよかったのではないか。
少なからずのヘルプがあれば、戦力外通告に至るまでの破局は避けられたのではないかとも思えてくるからだ。
一平事件で問題視された“通訳依存”
おそらくメジャーで最も著名な通訳でもあった水原一平が違法賭博事件で球界を震撼させたことで、米スポーツにおける通訳と選手の関係にはこれまで以上の脚光が当たる結果となった。その過程で、メジャー7年目を迎えた大谷の通訳への依存が一部から批判的に語られることにもなった。
これは大谷に限らずだが、米キャリアがベテランの域に差し掛かった選手でも、日本人のメジャーリーガーはメディア対応時に通訳の助けを借りるのが通例になっている。それに関し、少々ネガティブな声を聞いたのは一度や二度ではない。
実際にそれぞれの選手が徐々にでも英語を学習し、自身の言葉で話すようになれば、多くの人に様々な形での恩恵があるのだろう。その選手と周囲の人間の関係はより身近なものとなり、メディアの側から見ても関係構築、取材時間短縮、質疑応答の内容向上といった面で意味は大きい。それらを考慮すれば、日本人選手の通訳への依存に疑問が呈されるのもある程度は理解できるところではある。
しかし、今回のロペスの一件で、少なくとも公の場でのやりとりでプロの通訳の力を借りることのアドバンテージが分かり易い形で示されたともいえる。