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「2人のダービージョッキー」誕生なるか…亡き藤岡康太が戸崎圭太に伝えた“ジャスティンミラノのすべて”「康太と一緒…すごく心強いんです」
posted2024/05/25 11:03
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Keiji Ishikawa
この馬が勝てば、史上初の父仔3代制覇となると同時に、史上8頭目の無敗のクラシック二冠馬が誕生する。そして、管理調教師は自身の持つ同レース現役最多勝記録を「4」に伸ばし、主戦騎手の言葉を借りると、「2人のダービージョッキー」が生まれる――。
今週末の「競馬の祭典」第91回日本ダービー(5月26日、東京芝2400m、3歳GI)で本命視されている、ジャスティンミラノ(牡、父キズナ、栗東・友道康夫厩舎)である。
藤岡康太が戸崎圭太に伝えていた“ミラノのすべて”
ジャスティンミラノは昨秋の新馬戦、今年初戦の共同通信杯、そして前走、4月14日の皐月賞を3戦全勝で制した。
皐月賞の1週前追い切りまでこの馬に調教をつけていたのは、4月6日のレース中に落馬し、同10日に35歳の若さで亡くなった藤岡康太騎手だった。
藤岡騎手は仕事熱心で礼儀正しく、一度でも話した人はみな好きになってしまう、本当にいい男だった。
腕もよかった。デビュー3年目の2009年のNHKマイルカップでGI初制覇を遂げ、昨秋、急きょ乗り替わったナミュールでマイルチャンピオンシップを勝ち、GI2勝目をマーク。今年もハイペースで勝ち鞍を重ねていたさなかのアクシデントだった。
彼が世を去ってから4日後に行われた皐月賞のゴールを、先輩騎手の戸崎圭太が騎乗したジャスティンミラノが先頭で駆け抜けた。
検量室前でジャスティンミラノと戸崎を迎えた友道康夫調教師も、友道厩舎のスタッフも、泣いていた。戸崎も、ゴーグルで涙を隠していた。
「ゴール前で、最後にひと押しあったのは、康太のおかげだと思っています」
そう振り返った戸崎に、藤岡騎手は、自身がジャスティンミラノの調教に乗って得た感触を、競馬場で会うたび細かく伝えてくれたという。走り出してから何完歩目で折り合ったかの完歩数まで、具体的に。
「ジャスティンミラノがこんなに強くなったのも、康太のおかげです」
そう話す友道調教師によると、藤岡騎手が友道厩舎の調教をサポートするようになったのは、藤岡騎手がフリーになった2013年ごろからだという。
友道調教師は、16年マカヒキ、18年ワグネリアン、そして22年ドウデュースで、現役最多となるダービー3勝を挙げている。これら3頭とも、藤岡騎手が稽古をつけていた。ジャスティンミラノにも、新馬戦の前から調教で騎乗していた。