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「2人のダービージョッキー」誕生なるか…亡き藤岡康太が戸崎圭太に伝えた“ジャスティンミラノのすべて”「康太と一緒…すごく心強いんです」
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKeiji Ishikawa
posted2024/05/25 11:03
本命として日本ダービーに臨む無敗の皐月賞馬ジャスティンミラノ。騎乗する戸崎圭太が「2人のダービージョッキー」という言葉に込めた思いとは
友道師が語るダービー「自分の力だけでは勝てない」
その藤岡騎手からバトンを受け、ダービーの2週前と1週前追い切りに騎乗したのは、荻野琢真だった。藤岡騎手とは競馬学校騎手課程の同期生だ。荻野は、藤岡騎手の紹介により、友道厩舎の調教に乗るようになったのだという。
荻野は、先週19日の京都6レースのゲート内で馬が暴れて右足を負傷し、休養することになった。だが、その4日前に行われたダービーの1週前追い切りでは、きちんと職責を果たしていた。
2週前と1週前にしっかり負荷をかけ、レース週はソフトに仕上げるのが「友道流」の調教である。
レース週の22日、栗東の坂路コースで行われた追い切りには調教助手が騎乗し、エネルギーをたっぷり溜めたままでの最終調整がプランどおりに行われた。
これだけ外厩の施設と調教技術が進化したこの時代でも、友道厩舎では、皐月賞からダービーに向かう馬はすべて在厩で仕上げている。前出のダービー馬3頭も、ジャスティンミラノもだ。馬にとっては一世一代の晴れ舞台に向け、ほんの僅かな変化も見逃さないための手法である。
皐月賞から距離が400m延びることに関して、戸崎と友道調教師は「心配していません」と口を揃える。
共同通信杯では向正面で動いて2番手まで進出した。普通ならそのまま抑えが利かなくなり、掛かってしまうところだが、戸崎が手綱を引くと、すっと折り合った。皐月賞でも、ゲートからある程度出して行ったのに、まったく掛からなかった。日本の競馬で距離がもつかどうかは、イコール、どんな流れでも折り合えるかどうかだと言っていい。この馬は、前に馬を置かなくても、鞍上の指示を受け入れて折り合う頭のよさと、高い操縦性、機動力、爆発力といった、ビッグレースを勝つために必要なものをすべて持っている。
もともとストライドが大きく、東京芝2000mの新馬戦と、東京芝1800mの共同通信杯を完勝していたので、早くからダービー向きだと言われていた。取りこぼすとしたら小回りの皐月賞だと思われていたのだが、そこを1分57秒1というコースレコードで制した。いわんやダービーをば、という状況なのだが、友道調教師に油断はない。
「2009年の皐月賞をアンライバルドが勝って、ダービーで1番人気になったのですが、当日、ものすごい雨が降って不良馬場になり、12着に負けたんです。あんな豪雨はそうあるものではない。自分の力だけでは勝てないんだな、と思い知らされました」