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格闘技PRESSBACK NUMBER
慶應大を飛び級卒業→弁護士を目指す“学生アイドルレスラー”…無村架純“最高の引退試合”とこれから「表舞台に出ることはたぶんない。でも…」
posted2024/05/23 11:03
text by
門間雄介Yusuke Monma
photograph by
Takuya Sugiyama
2024年3月、ひとりの学生レスラーがリングを去った。名前は無村架純。慶應大学を飛び級で卒業し、現在は法科大学院で弁護士を志す彼女の“最後の試合”はどのような結末を迎えたのか? 学生プロレス界で異例の輝きを放った無村に、ロングインタビューで迫った。《NumberWeb特別引退ドキュメント第2回/前編から続く》
2024年3月、学生プロレス界で随一の人気を誇る女子学生レスラー、無村架純の引退試合が行われた。
慶應プロレス研究会(KWA)によるこの日の自主興行では、3人の4年生が引退した。無村、朝倉母乳(みるく)、マラ橋弘至の3人だ。
選手数2名という暗黒期を経て、どうにか生き延びてきたKWAの歴史において、この3人はプラチナ世代と呼ばれる。
朝倉とマラ橋が闘う引退試合は、ダブルメインイベントの2試合目。そしてダブルメインイベントの1試合目に、無村の引退試合が組まれた。
対戦相手は立命館プロレス同好会(RWF)の3年生(2024年3月当時)、女子選手のパチ子。自分に出せるものを、ちゃんと出して終わりたい。最後の試合を前に、無村には期するものがあった。
「正直に言うと、学生プロレスで試合をするときは対戦相手のほとんどが男子選手で、そうすると自分が輝けないという印象があったんです。それが少しつらかったんですね」
「女子同士でもいい試合はできる」
KWAにはこれまで、何人かの女子選手が在籍してきた。不思議なことに、約5年に1度の周期で、男子選手しかいない団体の門を“変わり者”の女子選手が叩いてきた。
15年近く前に所属した女子選手は、アマチュアレスリングでの経験を生かし、現在プロのレスラーとして活動している。10年近く前に所属した女子選手は、父親がリングのキャンバスを製造する仕事に就いていた関係で、KWAにリングを寄贈した。
そして4年前、無村が入部した。
けれども彼女に続き、さらに女子選手が増えるという変化は起きなかった。となると、彼女は体格差のある男子選手と劣勢な試合をするしかない。
「だからいつも第1試合とか、第2試合とか。女子がセミやメインを任されることはほとんどないんです。他団体でも同じような状況だと思います。でも女子選手にだっていい試合はできるし、女子同士でもいい試合はできる。最後にそういうものを見せたかったんですね」
引退試合を行うことは以前からわかっていたので、ずっと対戦相手を検討していた。悩んだ挙句、レベルの高い関西で練習を続けてきた、1学年下の実力者パチ子を指名した。