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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「その才能を活かしきれていたか?」天才ボクサーと歩むトレーナーの自問自答…内藤律樹32歳はなぜオーストラリアから再び“世界”を目指すのか
text by
関根虎洸Kokou Sekine
photograph byKokou Sekine
posted2024/05/14 11:11
2024年3月15日、オーストラリアでの第2戦をKO勝利で飾った内藤律樹。試合終了直後のリング、わずかに切れた目尻から血が滲んでいた
「アイライク、ピッツワース。アイライク、トゥーンバ。アイライク、オーストラリア。サンキューベリーマッチ」
試合後のインタビューでマイクを向けられたリッキーがそう語ると、満員の会場は大歓声に包まれた。
デビュー戦を終えたリッキーは、年末にブレンドンと3年間のマネージメント契約のサインを交わした。これで今後はオーストラリアを拠点に活動することになる。
第2戦が行われたのは2024年3月15日。第1戦と同じ、ブレンドンが地元で開催する自主興行にセットアップされた。会場はトゥーンバの町にある収容人数1000人のルモアーズ・インターナショナル。満員の観客で埋まった会場に、映画『ラスト サムライ』のサウンドトラックが響き渡り、袴姿のリッキーがリングに登場した。
「RIKKI NAITO」2年半ぶりの世界ランキング復帰
オーストラリア第2戦。鮮やかなTKO勝利でリングを降りたリッキーが控室に戻ると、興奮気味のジムメイトたちや多くの関係者から祝福を受けた。リッキーの勝利を皆が自分のことのように喜んでいる様子を眺めながら、私は彼がすでにオーストラリアの地で受け入れられていることを確認した。
「リッキーとの写真を撮ってくれないか」
トレーナーのコーベンが、子供っぽい顔をして私に語り掛けた。
4月20日。WBCの最新ランキングが発表され、「RIKKI NAITO」がスーパーライト級の39位にランクされた。2021年の年末に東洋太平洋タイトルを手放して以来、2年半ぶりの世界ランキング復帰である。
ランキングを確認したリッキーから、メッセージが送られてきた。
「ここから上げていくだけです」
呟くような短い一文が、遠く南半球の地からリッキーの声となって聞こえてきた。
<前編から続く>