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ボクシングPRESSBACK NUMBER
井上尚弥は「僕よりサッカーが上手かった」幼なじみの元サッカー選手・山口聖矢が明かす怪物の少年時代「ナオはボクシングのことを話さなかった」
posted2024/05/15 17:00
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
Takuya Sugiyama
試合を見ると、いつも涙が出てしまう
リングに上がれば、小さい頃から知る幼なじみが近くて遠い存在になる。5月6日、4万3000人が熱狂する東京ドームのリングサイドに近い席で、手に汗握りながら井上尚弥のルイス・ネリ(メキシコ)との防衛戦を観戦していた。1回のキャリア初ダウンには驚きを隠せずに言葉を失い、2回にダウンを奪い返すと、声をからすほど叫んで立ちくらみを起こす。そして、6回には圧巻のTKO劇を目の当たりにして、思わず涙腺が緩みかけた。
「ナオ(尚弥)の試合を見ると、いつも感情移入して涙が出てしまうんです。あの日はなんとか我慢しましたけどね。昔から一緒にロードワークをしていますし、準備の過程も知っています。想像を絶するプレッシャーはあったと思いますが、試合前からそんなところは一切見せなくて。勝つたびに思うんです。頑張ってきたことが報われて良かったと」
井上尚弥はリオネル・メッシ
世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上と28年来の付き合いになる山口聖矢はしみじみと話す。昨年8月、同門の大橋ジムから元Jリーガーの肩書を持つボクサーとしてライト級4回戦でプロデビューし、いまはジムメイトとして、ともに汗を流す仲。同じ時間を長く過ごすようになり、あらためて感じている。パウンド・フォー・パウンドで1位にランクされたモンスターの顔を頭に浮かべると、ふと頬を緩めた。
「サッカー選手に例えれば、(史上最高の選手と言われる)アルゼンチン代表のリオネル・メッシですよ。真似したくても、誰も真似できませんから。何もかもがすごいですが、普段のナオは昔のまんま、いまも変わりませんね。めっちゃ“悪ガキ”ですよ。公園で鬼ごっこしていたときと同じです」