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藤井聡太21歳「開き直って頑張りたい」名人戦と叡王戦“不調説”は本当か…初カド番と“八冠陥落”危機に思い出す「96年の羽生善治七冠」
posted2024/05/05 17:02
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by
日本将棋連盟
藤井聡太叡王(21=竜王・名人・王位・王座・棋王・王将・棋聖を合わせて八冠)に伊藤匠七段(21)が挑戦している第9期叡王戦五番勝負。その第3局は5月2日に愛知県名古屋市「名古屋東急ホテル」で行われた。そして伊藤が激闘の末に第2局に続いて勝ち、2勝1敗と勝ち越した。その結果、伊藤は叡王のタイトル奪取まであと1勝と迫った。藤井が計23期のタイトル戦で、同一カードで連敗と負け越し(第1局を除く)は初めてのことだ。
タイトル戦で21連覇している藤井の意外な変調、公式戦で藤井に11連敗していた伊藤の反転勝利、などの背景について田丸昇九段が解説する。
今期名人戦、叡王戦のここまでを振り返る
2023年度のプロ棋界の勢力図は、昨年10月に八冠制覇の偉業を達成した「藤井聡太」一色に塗りつぶされた。
今年4月に発表された将棋大賞では、藤井は最優秀棋士賞を4回連続で受賞した。年度勝率は1位の0.852(46勝8敗)。1967年度に中原誠十六世名人(当時五段・20)が打ち立てた歴代1位の0.855(47勝8敗)にわずかに及ばなかった。
24年度に入ると、第82期名人戦七番勝負で藤井名人は挑戦者の豊島将之九段(34)に2連勝。第9期叡王戦五番勝負で藤井叡王は挑戦者の伊藤七段に初戦に勝利。藤井はこのように好スタートを切ったが、内容的には敗勢に陥る状況にもなった。名人戦と叡王戦の戦いぶりを、時系列で振り返ってみる。
◆叡王戦第1局(4月7日)愛知県名古屋市「か茂免」 ※持ち時間は各4時間
振り駒の結果、先手番は藤井に決まる。戦型は角換わり腰掛け銀。長い駒組み手順を経て戦いが始まり、藤井が桂得に成功した。伊藤はその代償に相手の玉頭に迫った。敵陣に角をともに打った攻め合いで、伊藤に寄せを逡巡する疑問手があり、藤井が▲6六飛と寄せに活用する手で勝勢になった。
17時58分、藤井叡王が107手で先勝。残り時間は、藤井8分、伊藤0分。
藤井「少し苦しい展開でしたが、飛車がさばけて抜け出せました」
伊藤「何かチャンスがあると思いましたが、寄せを誤ったようです」
名人戦第1局は「押されている時間が長かった」
◆名人戦第1局(4月10・11日)東京都文京区「ホテル椿山荘東京」 ※持ち時間は各9時間
振り駒の結果、先手番は藤井に決まる。