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藤井聡太21歳「開き直って頑張りたい」名人戦と叡王戦“不調説”は本当か…初カド番と“八冠陥落”危機に思い出す「96年の羽生善治七冠」
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by日本将棋連盟
posted2024/05/05 17:02
叡王戦で初のカド番に追い込まれた藤井聡太八冠。苦境の中で、名人戦を含めてどんな将棋を見せてくれるだろうか
藤井は大記録やタイトル獲得がかかった対局で、平常心で盤面に集中して栄誉を得てきた。しかし、負けると叡王失冠(八冠陥落)という後ろ向きの勝負は初めての経験だ。そんな苦境をどのように乗り越えるのか、今後の棋士人生を占う意味でも注目したい。
伊藤は昨年の竜王戦で藤井に挑戦して4連敗、今年の棋王戦で藤井に挑戦して3連敗と、タイトル戦で敗退してきた。通常なら心が折れてしまうもので、ほかの対局にも影響しかねない。ただ「藤井戦ではばっさりと斬られるので、ほかの棋士との敗戦より悔しさを感じない」と語ったという。
その精神的な強さ(または鈍感力?)が今期叡王戦での原動力になっているのかもしれない。
羽生は七冠達成の5カ月半後、三浦に敗れ…
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1996年2月14日に羽生善治(当時25)は「七冠制覇」の偉業を達成した。あまりにも強いので、タイトル独占はずっと続くと思われていた。しかし5カ月半後の7月30日、第67期棋聖戦五番勝負で羽生棋聖は三浦弘行九段(同五段・22)に2勝3敗で敗れ、七冠の一角が崩れた。その三浦は前年の棋聖戦でも羽生に挑戦し、3連敗で敗退した。
今日の藤井八冠も、タイトル独占はずっと続くと思われている。ただ伊藤七段は三浦と同じくタイトル再挑戦で、叡王戦は棋聖戦と同じ五番勝負。似たような状況で、果たして96年の再来はあるだろうか……。