将棋PRESSBACK NUMBER
藤井聡太21歳「開き直って頑張りたい」名人戦と叡王戦“不調説”は本当か…初カド番と“八冠陥落”危機に思い出す「96年の羽生善治七冠」
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by日本将棋連盟
posted2024/05/05 17:02
叡王戦で初のカド番に追い込まれた藤井聡太八冠。苦境の中で、名人戦を含めてどんな将棋を見せてくれるだろうか
豊島が4手目に9筋の端歩を突いて作戦面が注目されたが、藤井に▲3四飛と横歩を取らせる形となった。双方の飛車と馬が中段でにらみを利かし、一触即発の空気が生じたが、馬と馬が交換されて通常の駒組み手順に戻った。
中盤で豊島が飛車取りに打った△9五角が意表の一手で、藤井の攻め駒を抑えた。その後、激しい攻め合いとなり、豊島は藤井の玉に襲いかかった。終盤で△4八竜と金を取れば豊島の勝ち筋だったが、ノータイムで指した△4四香が敗着となった。窮地を逃れた藤井はしっかり寄せ切った。
11日21時22分、藤井名人が141手で先勝。残り時間は、藤井3分、豊島1分。
藤井「あまり想定されない展開となり、内容的に押されている時間が長かった」
豊島「チャンスの局面があったのに、正しい寄せを逃したのはひどかった」
タイトル連勝が止まった一局は「かなり早く想定から…」
◆叡王戦第2局(4月20日)石川県加賀市「アパリゾート佳水郷」
戦型は角換わり。後手番の藤井は△3三金の形に組み、早繰り銀で7筋から先攻した。実戦例はほかにあるが、藤井は公式戦で初めて採用した。藤井が8筋で銀交換して飛車を4筋に転じると、伊藤は角を敵陣に打って▲4七角成と自陣に引いて藤井の飛車を追った。藤井の飛車と中段に打った角の攻めに対して、伊藤は懸命に防戦した。形勢不明の終盤の局面で、藤井の玉が詰むかどうかの状況となったが、伊藤が見事に即詰みに討ち取った。藤井は玉の逃げ方を誤ったようだ。
18時20分、伊藤七段が87手で勝って1勝1敗の五分に。残り時間は、両者ともに0分。
伊藤「難しい将棋で、最後も勝ちの順が見えないまま指していました。結果がひとつ出て(藤井に初勝利)よかったです」
藤井「△3三金の形は予定の作戦でしたが、かなり早く想定から外れました。終盤では違う勝負手を掘り下げるべきでした」
伊藤は公式戦で藤井に11敗1持将棋だったが、本局で初勝利を挙げた。藤井はタイトル戦の対局で16連勝していたが本局で敗れ、大山康晴十五世名人の17連勝(1961年~62年)の記録に並べなかった。
「▲5二金と打たれたら負けだった」名人戦第2局
◆名人戦第2局(4月23・24日)千葉県成田市「成田山新勝寺」
戦型は先手番の豊島が「ひねり飛車」。ただ飛車を7筋に転じる時期が遅れ、その飛車を藤井の持ち駒の桂で狙われて苦しくなった。豊島は防戦一方だったが、藤井の攻め急ぎによって持ち直した。