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簿記に宅建、行政書士試験まで!?…東大一家の競泳パリ五輪代表・松本信歩が語る“令和の文武両道論”「どちらかを捨てる必要は全くなくて」
text by
山崎ダイDai Yamazaki
photograph by(L)AFLO、(R)Getty Images
posted2024/05/01 11:02
パリ五輪200m個人メドレー代表に選ばれた早大4年の松本信歩(東京ドームスポーツ)。どの種目もバランスよく泳げる強さが魅力だ
また、自分の中に全く違う分野で力を懸けられるものが複数あるということは、「精神面でも大きな意味がある」と松本は言う。
「水泳の方はどうしても調子の波があるので、常に好調の時ばかりではありません。そういう時に、資格取得や学業という全く違う軸の打ち込めるものがあるというのは、気持ちを切り替える意味でもプラスになる気がします」
実際、今夏の五輪を控え大学を一度休学する案もあったそうだが、上記の理由で学業と水泳の両立を決めたという。
「一意専心」という言葉に代表されるように、特に日本ではまだ「何か1つのことに集中することへの美学」が根強くあるように思う。ただ、本当にそれは、選手たちの生きる道を広げて行くことになるのだろうか。
松本はいまの若い選手たちの進路に関して、こんな風に考えているという。
「別に競技と勉強と、どっちかを捨てる必要なんて全くなくて。まずは今しかできないことを優先すれば良いだけだと思うんですよね。例えば私にとっては水泳が今しかできないことだと思うので、まずはそれが1番にできる環境を選んでいます。
でも、当たり前ですけど水泳以外の時間もあるんです。そこの時間で自分のやりたいことや、勉強をすることって全然できるので。練習の合間とか、夜寝る前、移動時間とか考え方次第でいくらでも時間は作れると思います」
五輪では「何より競技の結果」
そんな揺るがない自律のメンタリティを武器に、8月に松本は自身初となる大舞台へと挑む。
現在は国内の高地合宿施設でトレーニング中。5月下旬から欧州グランプリシリーズを回る予定で、その後は一度帰国してから最終調整を行い、五輪事前合宿地の仏・アミアンに入るという。
「やっぱり国の代表として戦うことになるので、なにより競技の結果ですよね。泳ぎの内容は二の次かなと思います。準決勝で自己ベストを出して、決勝進出が目標です」
文と武の二刀流アスリートは、フランスの地での大躍進を虎視眈々と狙っている。