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ドラフト指名漏れ“21歳の日本人”がドジャースと契約した11年前「ヤベェところに来ちゃった」マイナー解雇を経て…会社員&投手コーチの今
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNanae Suzuki
posted2024/04/21 06:00
大谷翔平や山本由伸の活躍で注目されるメジャーリーグだが、誰もがそのサクセスストーリーを踏んだわけではない
日本のプロ野球を経ていつかはメジャーリーグへ。西嶋はそんな夢を抱いていた。だが、2010年、斎藤佑樹ら早大トリオ、中央大の剛球右腕・澤村拓一(ロッテ)、佛教大の左腕・大野雄大(中日)など豊作世代と言われたドラフト会議で、西嶋は指名から漏れる。その折にドジャースが接触したのだった。
じつは“自由じゃない”アメリカの育成
渡米後は激しい競争を目の当たりにした。同時に、育成環境の違いに衝撃を受けた。
「日本でもある程度の年齢になると、選手に『練習を任せる』とか『放任する』とか言いますよね。あれ、どういう意味で言っているのかなって思うんですよね。アメリカではスプリングトレーニングの中でも、スターター枠、リリーバー枠というのがちゃんとある。スターターは投げる日があって、翌日はこういうトレーニング、2日目、3日目……と全部組まれているんです。かなり計画的に練習しているんだなと思いました。アメリカは大雑把に見えますが、プログラム化されてるし、その意味では自由ではない」
メジャーリーガーでいえば10月のプレーオフでどう戦うかまでのスケジュールが綿密に計画されている。マイナーも同様だった。
「投球数いくつ、ブルペンの回数、バッターを立たせて投げるという段階があって、それをクリアしたら次にライブBP(実践形式の打撃練習で投げること)、シートバッティング、紅白戦を経て、オープン戦に入る。きっちり決まっていました。また、マイナーでは毎朝、体重を測ることも義務付けられていた。あまりに痩せすぎている選手は練習を禁止されることもありました。高タンパクな食事を摂ることで体は大きくなりましたね」
計画的な育成手法があり、その中で結果を残していけば、プロスペクト(若手有望)の枠に入る。体を鍛えていく中で結果を求められるわけだ。