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サムライブルーの原材料BACK NUMBER
「これは初めて明かすのですが…」ロシアW杯日本代表・昌子源が語る“ロストフの悲劇” で刺さった先輩GKの言葉「まだ終わってない。まだ10秒ある」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byShigeki Yamamoto
posted2024/04/02 17:04
FC町田ゼルビアの主将を務める昌子源(31歳)。自身が影響を受けたリーダーについて語った
そのうちの一人が鹿島の黄金時代を築き、長らくチームを引っ張ってきた小笠原満男である。昌子も小笠原キャプテンのもとで多くのタイトルを手にしてきた。
「ミツさんはランニングにしても、ウォーミングアップにしても一番うしろ。グラウンドにも最後にあらわれるし、ミーティングもうしろも空いている席に座って聞いている感じなんです。キャプテンの振る舞いっぽくはない(笑)。でもいざ練習になれば、試合になれば誰よりもやる。相手のキーマンはこの選手だってなったら、真っ先にそこをつぶしにいく。チームが勝つためには、ミツさんについていけばそれが正しい道なんだなって思わせてくれる。正直、その背中についていきたくなるんですよ」
小笠原がドンと構える鹿島で、勝つチームの勢いとは何かを学ばされたことがあった。7年ぶりとなるJ1制覇を果たした2016年シーズン。クラブワールドカップではアジア勢で初めて決勝に進出し、レアル・マドリードとの大一番も延長戦までもつれた。帰国後、天皇杯に臨んで元日の決勝では川崎フロンターレを下して頂点に立っている。
「勝って兜の緒を締めろってよく言うじゃないですか。でもあのときはチームの勢い自体、プラスにしか働いてない感じがあって、締めるどころかむしろ伸び伸びやらせてもらった。締めないアプローチだから、その勢いを止めなくていいというか。
天皇杯の準決勝で(横浜F・)マリノスと戦って決勝はフロンターレ。年間の試合数も多くてシーズン最後で体に疲労が溜まった状態ではあったと思うんですけど、レアルとの戦いも注目されてノッていたところはあった。決勝やからって変に気持ちを入れなくて良かったし、チームが誰一人として勢いを感じていたから、川崎さんがどうこうじゃなくて、過信とかじゃなくて、絶対勝てるって思って臨んだ試合でもあったんです。結果、延長まで行っているんですけど、負けるとはまったく思わなかった」
勢いを敢えて“馬なり”にすることで、加速させられた。チーム全体でドンと構えることができた。
小笠原とは正反対な長谷部のリーダーシップ
昌子が同じようにその背中についていきたいと思わせてくれたキャプテンに、日本代表時代の長谷部誠がいる。練習、試合となったら誰よりもやる、キーマンを真っ先につぶしにいくといったところも同じボランチである小笠原との共通項だが、チームを引っ張っていくアプローチは違うという。
「ランニングもウォーミングアップも常に先頭ですから、ミツさんとは正反対ですよね。ハセさんで言わせてもらうなら、チームが良くない状況にあると思ったらすぐピリつかせてくれる。もう1回ここ集中しようよか、もう1回しっかりしようとか。自分も出場したロシアワールドカップもそうですけど、(本田)圭佑くん、(長友)佑都くん、(香川)慎司くんたちがいたあの個性派揃いのチームを、よく束ねていたと思いますよ。なにせ判断に迷いがないから、ついていきやすい。目の前に3本の道があるとしたら、パッと1本を選んでいくイメージ。どうしよう、こうしようっていうのがない。これはミツさんも同じなんですけど」
ハセさんの言葉に「シビれましたよ(笑)」
ロシアワールドカップ、グループステージ第3戦のポーランド戦だった。0-1のビハインドながらこのままで推移すればフェアプレーポイント差でラウンド16に進めるという状況。西野朗監督は終盤、温存していた長谷部を投入して自陣でパス回しをして攻めずに試合を終えるべく実行させた。その戦い方には批判もあり、西野は選手たちの前で詫びている。