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大阪桐蔭に“憧れるのをやめましょう”「また内角に行くんか」エースは笑った…2年連続撃破・報徳学園が“横綱にビビらない”2つの要因
text by
間淳Jun Aida
photograph byKyodo News
posted2024/03/29 18:00
大阪桐蔭戦で1失点完投し、ガッツポーズする報徳学園・今朝丸裕喜
相手が大阪桐蔭でも怯まない。そのしつこさは、今朝丸が試合後に「また内角にいくんかという感じでした」と笑うほどだった。
もう1つ…ミスが1つ出ても連鎖させない
もう1つ、大阪桐蔭に負けないと自負するのは守備力にある。
新基準のバットでゴロは勢いが弱くなり、外野はフライの判断が難しいと言われ、守備の重要性が高まっている。昨年のセンバツでも2年生でサードを守っていた西村が語る。
「今朝丸、間木という柱になる投手がいるので、チーム全体で守備からつくっていく意識を持って練習してきました。自分たちの持ち味は守備です。ロースコアに持ち込めば勝てると自信を持っています」
守備練習では「1を大事に」をキーワードに、1球の重みと球際の強さを掲げてきた。1つのミスで流れが変わる緊張感を持ちながら、ミスが1つ出ても連鎖させない大切さをチーム全体で共有している。
この試合も守備の安定感は抜群だった。判断や送球が難しい打球も難なく処理し、ヒットになりそうな打球をアウトにして球場を沸かせるプレーもあった。大会前から指摘されていた守備面の不安を露呈し、失点につながる2つの失策を記録した大阪桐蔭とは対照的だった。
“完璧を求めすぎない”守備の安定感
報徳学園の守備の安定感は、完璧を求め過ぎないことも要因となっている。チームメートの守備力の高さを知っているからこそ、仮に自分がミスをしても「仲間がカバーしてくれるはず」という心のゆとりがある。西村が言う。
「今年は二遊間が後輩なので、自分がサポートする意識を持っています。昨年は自分が先輩たちに助けてもらいましたから。ミスは誰でもします。次のプレーで他の選手がカバーすれば問題ないと思っています。強豪の大阪桐蔭相手なのでピンチは付きものです。ピンチや失点は想定していたので、慌てず冷静に守ることができました」
守備からリズムをつくる報徳学園の野球を表現できれば、どんな相手にも負けない。たとえ相手が高校野球界の中心にいる“横綱”大阪桐蔭でも変わらない。