メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
「僕の口座からお金を盗んで、嘘をついていた」大谷翔平が語った水原一平氏の「嘘」の重さ…米国スポーツで頻繁に起きる窃盗・横領の事例
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph by提供:Los Angeles Dodgers/UPI/アフロ
posted2024/03/27 17:03
水原一平氏の違法賭博関与の問題について声明を発表したドジャースの大谷翔平
レディング選手が引退を考えた際に口座にほとんどお金が残っていないことが判明したため、引退を先延ばしして選手生活を続けたという。
この件を担当した検事は「純粋に個人的な利益のために、嘘と欺瞞によってその信頼を悪用した」と厳しい言葉を残している。(※参考:米国司法省より:https://www.justice.gov/usao-sdin/pr/financial-advisor-sentenced-seven-years-federal-prison-defrauding-former-colts-player)
同様に2023年にはNBAエージェントのチャールズ・ブリスコー氏、財務アドバイザーのダリル・コーエン氏らが、バスケットボール4選手から総額で1300万ドル以上(約20億円)を横領し、起訴されている。コーエン氏は住居の改装、恋愛関係にあった女性へのお小遣い、クレジットカードの支払いなどに充てていた。
この件はまだ判決が出ていないが、投資アドバイザー詐欺、個人情報窃盗罪など各訴訟の最高刑は懲役25年とされている。(※参考:米国司法省より:https://www.justice.gov/usao-sdny/pr/financial-advisor-financial-planner-nba-agent-and-previously-convicted-fraudster)
口座へアクセスする権利を持っていたか
ほかにもスポーツ選手のマネジャーによる横領のケースは多数存在する。もちろんその多くは投資や財務を担当するマネジャーで口座へアクセスする権利(Power of Attorney:委任状)を持っていたと思われる。
水原氏がその権利を有していたかは現段階では不明で、どのように口座にアクセスしたかは明らかになっていないが、米国生活に必要な社会保障番号の取得、銀行口座の開設、オンラインのパスワード設定を始め、その後の銀行とのやりとりなどもサポートしていた可能性は高い。
米国で多くのプロスポーツ選手を顧客に持つマイケル・ストラウス弁護士はスポルティコの取材に対し「今回の大谷の件は多くのトップ選手にとってよい教訓になったはずだ。自分の内部の人たち(マネジャー、会計士、財務管理担当者など)を常に監査し、法的危機やPR上の危機に積極的に備えなければならない」と話す。
大谷選手の場合、金額はもちろんだが、それ以上に、水原氏の「嘘」によって選手生命を脅かされかけたこと、イメージの低下、スポンサーの喪失の可能性、そして野球に集中できない状況ができたことなど失ったものはとても大きい。