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「僕の口座からお金を盗んで、嘘をついていた」大谷翔平が語った水原一平氏の「嘘」の重さ…米国スポーツで頻繁に起きる窃盗・横領の事例
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph by提供:Los Angeles Dodgers/UPI/アフロ
posted2024/03/27 17:03
水原一平氏の違法賭博関与の問題について声明を発表したドジャースの大谷翔平
長年パートナーとして二人三脚で歩いてきた大谷選手を絶望の淵に引き摺り込みかねなかった。
つい口から出た「嘘」だったのかもしれないが、越えてはいけない一線を越えてしまったように思う。大谷選手から野球を奪うことは、おおげさに聞こえるかもしれないが「命」を奪うことと同等のように思う。
「正直ショックという言葉が正しいとは思わないですし、それ以上の言葉で表せないような感覚でこの1週間ぐらいはずっと過ごしてきた。今はそれを言葉にするのは難しいなと思っています」
この言葉に多くの人が胸を締め付けられるような思いだったのではないだろうか。
米国スポーツ界で起きた横領事件
水原氏が大谷選手の口座から450万ドル(約6億8000万円)を「巨額窃盗(Massive Theft)」したとして、大谷選手は告発し、捜査を依頼している。
水原氏は違法賭博の問題とは別に窃盗の件でも捜査され、おそらく立件されるだろう。
「そんな大金をどうやって横領したのか」
「大谷の関与なしで無理じゃないか」
「大谷が気づかないわけがない」
そんな意見もちらほらと見かけるが、米国のプロスポーツの世界でマネジャーによる横領は頻繁に起きている。
2018年にNFLのコーリー・レディング選手の財務アドバイザーだったケネス・クリーブランド氏が、今回の事件とほぼ同額の470万ドル(約7億円)の投資詐欺を行い、懲役7年(84カ月)の実刑判決を受けている。
レディング選手は、アメフト選手が派手に浪費をして引退後に金銭に困るケースを多く見ていたため、堅実に投資をしたいと大学の教授に相談したところクリーブランド氏を紹介され、10年来の関係となった。
「嘘と欺瞞によって信頼を悪用した」
米国司法省によると、クリーブランド氏は預かっているお金を投資し「順調に利息がついている」と財務諸表まで偽造する一方で、実際は家賃などの生活費、従業員や家族への給与を支払っていたという。定期的にレディング選手に利息を払っていたが、支払われた利息自体もそもそもレディング選手のお金だったというから驚きだ。