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「髪型で高校を選ぶのは、本質とずれている」中央学院との“長髪対決”が話題も…《甲子園初出場》耐久高監督が語った令和の「個性の伸ばし方」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2024/03/21 11:15
中央学院に敗れ肩を落とす耐久の選手たち。坊主と長髪が混在するチームに見る、現代ゆえの「個性」の在り方とは…?
マイナス要素を咎めるのではなく、それをプラスに転換させて選手の個性を引き出す。
井原はそんな指導方針を重んじている。
「3年生は特にそうなんですが、こちらが全部を言わなくても自分たちでできる子が多いんです。だから、ちょっとおかしい方向に行きそうなときだけ修正して。あとは気になったことがあれば個別に話すようにしています」
その「個別」には当然、キャプテンも含まれている。むしろ、チームの舵取り役だからこそ、密な軌道修正が展開されている。
赤山侑斗は目を丸くしながら言う。
「監督さんと話すと、自分の心に突き刺さるようなことばかり言ってくださるので。すごく説得力のある方だなと思います」
胸に刻み続ける監督の言葉とは?
そう尋ねると、赤山は「あ、あります」と即座に反応し、監督からの言葉を反芻する。
「仲間への配慮を持てばもっとよくなる。心を広くしてチームをまとめていってほしい」
その度に、赤山は襟を正す。
「性格的に『自分が、自分が』となってしまうことがあるので。センバツの前とか大事なタイミングで監督さんに言っていただけると、自分を見つめ直せるというのはあります」
令和の時代だからこそ…いかに個性を伸ばすのか
監督の信頼が、選手をみずみずしくさせる。
公式戦になると「坊主がいつもより3、4人増える」という主体性の強い集団を、主張できるキャプテンが牽引する。
昨秋にエースの冷水を中心とし、校名のごとく耐えて勝ち、監督に導かれ自己も変えて勝った。そんなチームが甲子園出場を果たしたのは、きっと偶然ではなく必然だった。
日本の転換期に誕生した学校。
その野球部は、変革の時代に突入した令和においても動じず、柔軟に生きる。