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「髪型で高校を選ぶのは、本質とずれている」中央学院との“長髪対決”が話題も…《甲子園初出場》耐久高監督が語った令和の「個性の伸ばし方」
posted2024/03/21 11:15
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
JIJI PRESS
多様性が強調される現代において、もはや“長髪対決”といった謳い文句ですら世間に違和感を与えてしまうのかもしれない。
センバツ3日目の第3試合。耐久対中央学院の一戦は、甲子園で選手たちが「当たり前」を示しているようでもあった。
髪を伸ばした選手ばかりの中央学院とは対照的に、耐久は坊主の選手も目立つ。
監督の井原正善が首をかしげて笑う。
「髪型を自由にしたらしたで、坊主が増えるという。それが不思議なんですよね。帽子が被りやすいからなのかな?」
さらに井原は、選手たちを「今の子」と表現し、自分とのギャップを冗談っぽく嘆く。
「今の子たちは普段通りというか、いい意味で無頓着というか。私は緊張するんで、『楽しみたい』と言葉に出したいくらいなのに」
初出場の甲子園は1-7で敗戦
試合での耐久は、昨秋の公式戦をひとりで投げ抜き、甲子園出場の原動力となったエースの冷水孝輔が、ランナーを背負いながら5回まで1失点と粘る。ところが、6回に3失点すると、守備のミスなども重なり、最終的に1-7と中央学院に敗れた。
井原が評した様子そのまま、選手は試合で普段通りだった。しかし、「今の子」たちを勝利へと結び付けられなかったことを悔やむ。
「初回のチャンスで先制点を取れず、結果的にゲームが後手、後手に回ってしまいましたし、相手はひとつのミスも許してくれませんでした。もう少し、私がなんとかしてあげられればよかったんでしょうけどね」
敗軍の将は肩を落とすが、井原は耐久にとって紛れもない改革者だ。
野球部の長い歴史において甲子園初出場という新たな扉を開き、チームにあった「それまでの高校野球」を払拭した指導者だからである。