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「髪型で高校を選ぶのは、本質とずれている」中央学院との“長髪対決”が話題も…《甲子園初出場》耐久高監督が語った令和の「個性の伸ばし方」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2024/03/21 11:15
中央学院に敗れ肩を落とす耐久の選手たち。坊主と長髪が混在するチームに見る、現代ゆえの「個性」の在り方とは…?
耐久の歴史は古い。
アメリカ海軍のペリー提督が浦賀に来航する前年の1852年に学校が創立され、野球部は1905年に誕生した。甲子園の第1回大会だと夏が開催される10年前、春では20年前に、すでに野球が息づいていたわけだ。
この伝統校で白球を追った井原は、35歳の2019年に監督として母校に帰ってきた。
「高校野球の見本となるように」
改革の大きなきっかけとなったのは、そこから約2年後の冬。中学校の指導者たちとのこんなやり取りがあってからなのだという。
「髪型で高校を選ぶのは、本質とずれているのではないか」
そうだよな――ひょんなことから井原が初心に立ち返る。その時期とは、ちょうど今年の3年生の入学と重なるわけだが、ショートの澤剣太郎は、監督の言葉を今も覚えている。
「髪を伸ばしてもいいけど、高校野球の見本となるように行動していこう」
耐久では坊主頭もそれなりの割合を占めるなか、澤はあえて長髪にこだわっている。
理由は、監督からの訓示を実践するためだ。
「正直、今でも髪を伸ばしていることへの偏見って、まだあると思うんですね。監督さんが初めに言ってくださった通り、自分も見本になりたい気持ちはあります」
澤は、監督について「性格とかプレースタイルを尊重してくださる」と話す。
もともと、自分の身になるかどうか疑問を感じる練習では無意識に手を抜いてしまう一面があった澤は、井原から諭されるように行動の是正を促されたのだという。
「自分を持っているということだから、それをいい方向に出してみろ。もし、自分から行動できなかったり、周りに流されてしまうような人間がいれば引っ張ってやれ」
澤は自身が率先して行っていたウエートトレーニングを、「自分だけでなくチームに必要だ」と積極的に誘うようになるなど、自発的に動く機会が増えたという。