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「記者の質問、たいしたことないな」日大アメフト部“悪質タックル”の元監督、内田正人がいま明かす騒動の渦中に感じていたこと 「後悔はある?」と問うと…
posted2024/03/09 17:01
text by
齋藤裕Yu Saito
photograph by
JIJI PRESS
悪質タックル問題とは?
2018年5月6日、関西学院大(以下、関学大)との対戦で日大のDL(ディフェンスライン)宮川泰介選手が相手のQB(クォーターバック)にプレー外で背後からタックルを行い、全治3週間のケガを負わせた。内田正人監督、井上奨コーチによる指示があったと関東の大学アメフト部を管轄する関東学生アメフト連盟(以下、関東学連)で認められ、チームには年度内の出場資格停止処分、内田監督と井上コーチには除名処分が下された。内田氏は監督と大学の常務理事も辞任。被害届が出され、警視庁が捜査したが、嫌疑不十分で立件はされなかった。
僕は受けのいい監督をする気はさらさらない
――悪質タックルの試合が起きる3日前の5月3日の練習終わりのハドル(全体ミーティング)では、宮川選手に言及して「やる気があるのかわからない」と叱責したと日大の第三者委員会では事実認定されています。これは事実ですか?
そんなことみんなに言いますよ。言っていない子のほうが少ない。日常的にめちゃくちゃ言いますよ。僕は受けのいい監督をする気はさらさらないんです。僕が選手に言ったことで、彼らは絶対不満を持つ。不満を持った選手がコーチに相談する。もしくは、ここで僕につっかかってくる子もいる。それがコーチングのスタートだと思うんです。受けの良いことを言って、その場を済ますのであれば、その子の成長はないし、それだと上っ面だけの関係になってしまう。だから僕は悪役に徹して、わざと無理難題を僕が言ったとして、子どもたちがコーチに相談する。コーチはそうしたら、こうするといいんじゃないかと一緒に解決策を考えていく。そういう反応を起こしてもらいたいんです。
――宮川選手はどんな印象の選手だったんですか?
まず宮川とはその時もですが、それまでも会話をした記憶がないんです。基本的なプレーで少しケガにつながるかもなと心配していたプレーの傾向があって、そこは修正していかないとなと思っていました。社会人になってから、危惧していたプレーが出て結局ケガをしてしまったのですが……。DLを担当している井上(奨)コーチがよく面倒を見ているなという印象でした。
――悪質タックルが起きる試合前、宮川選手が監督のもとに行って「QBを潰すので試合に出してください」と話し、「やらないと意味がないよ」と言われたと本人が証言していました。これによって指示があったと関東学連や第三者委員会も認定しました。これは事実ですか?
あのとき、会話はしていません。僕の3、4mほど前に来て、少し微笑んでという感じでした。ただ彼は会話をしたと思っているからそれも「正しい」わけですよね。警察の人に言われたんです。1対1の会話は立証が無理だよ、と。
――司法の判断とは別で、そういった状況が目の前にあって不自然だと思わなかった? 何か他にも「追い込まれているのかな」というサインは感じ取らなかったのか?
そもそも「追い込まれた」という表現は関学大から出た話なんです。本当に追い込まきゃいけない学生はもっと徹底的にやっています。過去に外国出身で素行に問題ありだった選手がいました。彼は社会人でもフットボールを続けたいという。それだったらそうなるためにはどうしたらいいかを説明して、徹底的に厳しく指導して実業団チームへと送り出しました。
厳しさは期待の裏返しであるとなぜ伝えなかった?
――宮川選手に話を戻すと、そういった厳しさの理由の説明をしていたんですか?