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「記者の質問、たいしたことないな」日大アメフト部“悪質タックル”の元監督、内田正人がいま明かす騒動の渦中に感じていたこと 「後悔はある?」と問うと…
text by
齋藤裕Yu Saito
photograph byJIJI PRESS
posted2024/03/09 17:01
2018年、多くの社会的関心が集まった日本大学アメリカンフットボール部の悪質タックル問題。あの問題とは何だったのか、辞任した監督に聞いた
プレーは見ていたのか、指示はあったのか
――そうして、迎えた2018年シーズンの5月6日春季交流戦・関西学院大学との試合で関学大のQBに対しての悪質タックルが起き、15ヤードの罰退(罰を受け、後ろに戻らされること)を受けました。関東学連などの調査では、内田監督がそのプレーを見て、井上コーチからの「やりましたね」の言葉に「おお」と応じた。そして、試合後、「内田がやれと言った、でいいじゃないですか」と話したそうですね。
まず、当該プレーに関しては見ていません。警察の方の話ではそのやりとりがあったと証言した選手は写真で確認してみると、その時に自分とは30ヤード近く離れていたそうです。なので司法の判断としてはその証言を真実とはしなかった。
そのプレーを視認できていなかったので、「内田がやれ」という発言は相手選手を殴るという他の反則行為を指していました。その反則行為に対して監督として責任を取る、自分は悪役になりますよという意思表示でした。
――ただ、見ていなかったとしても、そもそも15ヤード罰退があったら、何が起きていたか、監督として確認をしませんか?
警察の方から教えてもらったのは、近くにいたコーチに「なんで罰退したの?」と聞いていたそうです。ただ、僕はそのやりとりを覚えていない。
当初、謝罪に出向かなかった理由
――試合前、井上コーチは宮川選手に「相手QBを潰せ」と発言しましたが、これを内田さんは指示していないと当時証言されていました。アメフトに詳しくない人間からすると、この「潰せ」という単語が悪質タックルの引き金になったようにも思えます。
「潰せ」っていうのはどの大学でもほぼ毎日使っている単語だと思います。その後の2019年ラグビーワールドカップで日本代表のリーチマイケルが「個人的にはスコットランドをボコりたい」と言っていましたけど、それを信じて相手を本当にボコボコに殴る人いますか? いませんよね。それと同じです。Netflixのアメリカ大学アメフトのドキュメンタリー「UNTOLD―泥沼の王者たち―」とか見てみてください。もっとひどいこと言ってますから。
――当時、宮川選手の父が関学大に謝罪したいと申し出ていたのに、それを止めたのはなぜですか? 会見では「監督同士で電話でやりとりすると思っていた」という話がありましたが、前例があったのでしょうか?
2000年代に関西遠征に行った時、関学大の選手がうちの選手の頭にタックルし、その選手の左手側の神経が損傷し、完全に麻痺した状態になってしまったということがありました。電話で「こっちは障害を負ったんだぞ! 謝りに来いよ」と関学大の監督にはキツく言いました。その後、キャプテンと一緒に謝りに来て、その一件は関西学生アメフト連盟の理事長に言われていたのもあって、大事(おおごと)にせず、左手に障害が残ったけど許したんです。
そういった経緯があったのと、お互い社会人のマネージャー同士が連絡をとっていて、部の問題なので、部で解決しましょうというのが話し合いのスタート。そういう認識でした。でも、フタを明けてみると、関学大はどんどん記者会見していくし、参ったなと。だったら謝りに行くよと連絡して日程がようやく決まった。その謝罪の前日に、宮川選手が関学大QBの子の家に謝りに行っていたんです。
なぜピンクのネクタイだった?
――当日、謝罪に行って、その後空港で記者対応をしましたね。