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「記者の質問、たいしたことないな」日大アメフト部“悪質タックル”の元監督、内田正人がいま明かす騒動の渦中に感じていたこと 「後悔はある?」と問うと…
text by
齋藤裕Yu Saito
photograph byJIJI PRESS
posted2024/03/09 17:01
2018年、多くの社会的関心が集まった日本大学アメリカンフットボール部の悪質タックル問題。あの問題とは何だったのか、辞任した監督に聞いた
できないです。
――できない? 100人近くいる部なので、毎回というのは難しいのかもしれませんが、厳しさは期待の裏返しであるということをなぜ伝えなかったのですか?
自分も進退をかけてやっているので、それはできないですよね。それは逃げ道になってしまう。
――逃げ道?
これだけのことを思って、選手にこう言っているんだよと伝えるのは、僕の逃げ道になってしまうじゃないですか。
――内田さんの逃げ道ですか?
失敗した時に僕は選手にその思いをこう伝えていた、だから「許してください」という形にしたくなかった。失敗したらもう終わりで自分がやめればいいんだとそれくらいの腹のくくり方、覚悟で退路を断って、自分にも選手にも「厳しい指導者」であらねばならない、という意味です。
「勝利至上主義」と批判されましたけど…
――勝つためにそれは必要なんですか? それとも何か教育的な配慮なのでしょうか?
連盟(関東学連)の報告書でも「勝利至上主義」と批判されましたけど、監督が「君たちは2位だよ」「君たちは三流だよ」なんて言えないじゃないですか。どんな実力であっても、「君たちは優勝するだけの選手だよ」って言わないと。それはこれから上を目指す選手たちのプライドを考えても、優勝を目指しますよね。
――「勝て」と言い続けることが正しい?
結果はどう出るか、わからないですよ。でも「勝つんだ」という世界に1年なり、4年なり身を置かせることが重要なんですよ。勝利を目指して、その雰囲気を味わわせないと。
――選手がそこをプレッシャーに感じてしまっていたのでは? 負けたら怒られる、恐怖に感じる子もいたのではないですか?
そういう子もいるかもしれないですね。だけど、努力する雰囲気のチームで努力していって充実したんだよってのを覚えるほうが大事かと。その結果、2位だったり、最下位だったりしてもしょうがないですよ。
――そういった勝利を目指す姿勢を聞いていると、当初は辞めようと思っていたが、実際はカリスマ指導者の篠竹さんを超える6連覇を目指していたのかなとも思えてきます。
いえ、もともとやめるって言っていましたし、本当に1年限りのつもりでした。篠竹は天才だから、自分でカードを切らなくてもどんどん方針とかのアイデアが出てきた。我々はその都度、いろんなカードを見つけて切らなくちゃならなかった。ただ、僕は普通の人間。2017年に続いて、このチームをより良くするために2018年、2019年とカードを出せる自信が僕にはなかったんですよ。