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「ぼくはしあわせだな」白毛馬で史上初GI制覇、ソダシに関わった騎手&厩務員&調教師の証言「男泣きした」「背中をとおして教えてもらいました」
text by
江面弘也Koya Ezura
photograph byKeiji Ishikawa
posted2024/03/08 06:01
ヴィクトリアマイル優勝後、ソダシのもとに集まる須貝尚介調教師、吉田隼人騎手、今浪隆利厩務員
調教師になって初めて泣いた、ゴールドシップの皐月賞
「調教師になって泣いたのは、これが2度めなんです。最初は皐月賞、ゴールドシップが馬場にでてきたときに……」
その話をきいたとき、わたしは芦毛の皐月賞馬ハクタイセイを思いだした。デビューから9戦中8戦に須貝が乗っていた馬だが、皐月賞は南井克巳に乗り替わったのだ。
「(話を)そこに戻してほしくない」と須貝は言った。「あのときの布施先生(ハクタイセイの布施正調教師)は正しい。自分はジョッキーとしての能力に欠けていたし、乗り替わりはこの世界の常だから……」。
それでも、ハクタイセイについて書くことをゆるしてほしい。須貝が「競馬のドラマ」をファンに見せたいと思っているように、ハクタイセイを知っているファンは、「須貝とゴールドシップの皐月賞」にドラマを見たのだ。それは事実である。
距離が長かったという評価を覆したかった
ソダシの桜花賞は一般ニュースでも報道された。競馬に興味のない人々も白毛というきれいな馬がいることを知り、ソダシはアイドルとなっていた。
だが、オークスは8着に負けた。父のクロフネには1600m以下を得意とする産駒がめだつことで、距離が長かったという評価が多かったが、須貝は「それを覆したかったので札幌記念を使った」と言った。
オークスのあと短い休みでリフレッシュできたソダシは、2000mの札幌記念に出走し、年上のGI馬たちを相手に完勝した。厩務員の今浪は、春と比べてパワーアップしていた、と言う。
「身長が伸びて、馬に力がついてきた。馬が暴れるときのパワーが前とぜんぜん違うんですよ。成長を感じました」