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“世界屈指の高速コース”東京マラソンでパリ五輪代表選手が「でなかった」ナゼ…不安定なペースメーカー、世界選手権からの連戦、最大の理由は?
posted2024/03/04 17:01
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph by
Nanae Suzuki
日本人トップを走っていた西山雄介(トヨタ自動車)が残り300m地点を過ぎた頃、無情にもタイマーは2時間5分50秒を回った。
パリ五輪の男子マラソン日本代表の3枠目は、この瞬間にMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)3位の大迫傑(Nike)に決まった。
今回の東京マラソンには、パリ五輪の3枠目を懸けて、西山の他にも多くの有力選手が出場していた。日本記録保持者の鈴木健吾(富士通)、2時間5分台をもつ山下一貴(三菱重工)と其田健也(JR東日本)、高いレベルで安定感のある細谷恭平(黒崎播磨)といった面々だ。
MGCファイナルチャレンジ設定記録の2時間5分50秒を突破し、その最上位になればパリ五輪の残り1枚の切符を獲得できたが、結局、昨年12月の福岡国際マラソン、今年2月の大阪マラソンに続き、今回の東京マラソンでもその記録を破る者は現れなかった。
もっとも日本人で2時間5分50秒以内で走ったことがあるのは鈴木と大迫の2人しかいない。もともと高いハードルではあったのも事実だ。だが、シューズ等のギアの進歩もあり、日本の男子マラソンのレベルも格段に上がっている。
「世界屈指の高速コース」でも記録が出なかったのは…?
さらに、東京マラソンは世界屈指の高速コースなのだ。2時間5分50秒は決して不可能ではないターゲットタイムだと思われていた。しかしながら、それが叶わなかった。
その要因はどこにあったのか。
男女ともに大会新記録が誕生したように、気象条件は決して悪くはなかった。
レース後に「後半ちょっと暑くなった」という声もあったが、スタート時(9時10分)の東京都庁の気象が気温9.6度で暑さ指数(WBGT)4.7だったのに対し、男子選手トップフィニッシュ時(11時12分)の東京駅前は気温10.5度、暑さ指数5.7と、極端な気温の変化もなかった。
日本人トップ(9位)の西山や木村慎(Honda)は19km過ぎに転倒するアクシデントに見舞われたが、それよりもレース後に取り沙汰されたのはペースメイクだった。
前日のテクニカルミーティングで、男子の第2グループのペースは1km2分57秒~58秒に設定されていた。仮に1km2分57秒ペースで走りきれば、日本記録を上回る2時間4分29秒、2分58秒でもMGCファイナル設定記録を上回る2時間5分11秒となる。