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東京マラソン「日本記録達成ならず」も…“五輪にこだわらない”新谷仁美の型破りな挑戦が愛されるワケ「一番、声援が多いと感じるぐらいでした」
posted2024/03/06 11:03
text by
林田順子Junko Hayashida
photograph by
Nanae Suzuki
新谷仁美の東京マラソンでの日本記録更新への挑戦が終わった。
「単純に結果が出なかったということで、それ以上でもそれ以下でもありません」
レース後、記者会見場に現れた新谷は噛み締めるようにそう語った。
記録は自身の持つ自己ベストにも届かない2時間21分50秒。女子はパリ五輪の代表選考外である東京マラソンを回避する選手が多かったとはいえ、それでも日本人1位(全体6位)、日本女子歴代11位の記録である。
だが、新谷は自分を許せないとでもいうように、常に視線を落としていた。
既報のとおり、今大会はペースメーカーの粗さが目立った。レース中、熟練の記者や指導者からも「ペースが遅すぎる」と不安視する声が聞かれたほどだった。
当初の設定は1km3分17秒ペース。だが、前半は3分20秒、ときには3分22秒かかることもあった。
「楽だなと思ってはいたんですが、設定ペースより遅いということに気づかなくて」
見かねたコーチの横田真人が中間地点手前で「遅い!」と指示を出したことで、遅れに気づき、ペースメーカーはスピードアップ。だが、焦りもあったのか、直後は3分11秒という不安定さを見せた。
「横田コーチの声を聞いて、初めてやばいと思って。そこから変なリズムにハマってしまった」
どの大会でもペースの多少の上げ下げは想定内と言える。だが前半だけでここまで大きくブレることは珍しいだろう。結局、このダメージが後半への失速へと繋がった。
先月の大阪国際女子でペースメーカーを務めた新谷
1月に行われた大阪国際女子マラソンでペースメーカーを務めた新谷は、その直後、まるで今回を予見していたかのような話をしていた。
「ペースメーカーは選手ではなくて、設定されたタイムを刻むために呼ばれています。だからこそ設定を守るべきだし、そこから大きくずれているようであれば運営側が指示を出すべきだと思う。これだけ日本のマラソン界は低迷していると言われているのだから、日本陸上界を盛り上げるためにも、みんなが最後まで自分の役割に責任を持つべきなんじゃないかと思うんです」