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“世界屈指の高速コース”東京マラソンでパリ五輪代表選手が「でなかった」ナゼ…不安定なペースメーカー、世界選手権からの連戦、最大の理由は?
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byNanae Suzuki
posted2024/03/04 17:01
日本人トップに入った西山雄介(駒大→トヨタ自動車)だが、五輪代表の基準タイム2時間5分50秒に届かずゴール直後に大粒の涙を流した
確かに、五輪や世界選手権のような国際大会、またMGCのようなペースメーカーが不在のレースでは、序盤から駆け引きがあり、ペースの変動も激しい。真の強さを求めるなら、高岡氏が言うように対応力が必要だし、ペースメーカーが安定しないなら、自分でレースを組み立てるという判断も一手だろう。
ペースメーカーの流れに乗るのか、自力で勝負をかけるのか……その難しい決断を思い切れるかどうかが五輪への明暗を分けたのかもしれない。
世界選手権→MGC→ファイナルチャレンジという日程
もう1つ、今大会で有力候補とされた昨夏の世界選手権代表の山下、其田の2選手は約2カ月後のMGCにも出場した。そこから4カ月あまりで東京マラソンに挑んだことになる。この連戦も決して簡単ではなかった。
「やることは全部やってきたんで、後悔はないですけど、やっぱりMGCの本戦でしっかり勝ち切るってことが大事だなと思いました」
こう話す其田は、MGCでは15kmを前に途中棄権しファイナルチャレンジの東京マラソンに向けて準備をしてきた。見事に立て直し、2時間6分54秒と力走したものの、パリ五輪には届かなかった。
山下は、MGCで32位と苦戦した。その後にハムストリングスに張りが出て、東京マラソンに向けては満足のいく練習を積むことができず、今回は8km過ぎに遅れをとってしまった。ブダペスト世界選手権では、一時5位を走る健闘を見せただけに、山下のパリでの活躍を期待していた陸上ファンは多かったのではないだろうか。
世界選手権に出場することもまた選手たちにとっては名誉なこと。無理そうな日程でも、それが可能であるならば、日の丸をつけたいと思うのは当然だろう。4年後のロサンゼルス五輪の代表選考でもMGCが行われるならば、その前年の世界選手権の扱いをどうするか、はたまた、MGCの開催時期について見直しを図る必要はあるかもしれない。
東京、今回のパリと2大会連続でMGC形式の選考を行ってきた。選考方法の分かりやすさはファンから好評を得ている一方で、課題も見えたのではないだろうか。