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“世界屈指の高速コース”東京マラソンでパリ五輪代表選手が「でなかった」ナゼ…不安定なペースメーカー、世界選手権からの連戦、最大の理由は?
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byNanae Suzuki
posted2024/03/04 17:01
日本人トップに入った西山雄介(駒大→トヨタ自動車)だが、五輪代表の基準タイム2時間5分50秒に届かずゴール直後に大粒の涙を流した
「このコースは前半に貯金して、後半は何とか持ち堪えて……という走りが必要。こういう走りだったら、2時間5分半ぐらいは行けたと思う。やっぱり前半の貯金が足りなかった」
こう話すのは、多くの教え子をこのレースに送り出した駒澤大の大八木弘明総監督だ。
中間点は1時間2分55秒で通過した。単純に2倍にすれば、ちょうどMGCファイナル設定記録の2時間5分50秒になるが、このコースの特性ゆえ、イーブンペースではなく前半もっと飛ばしても良かったのではないか、というのが大八木総監督の考えだ。
その考えは選手も同じだ。
「ハーフは最低でも62分20秒、早くて62分ちょうどぐらいで入ってほしかったというのが率直な気持ちです。それよりも遅くなってしまったので、そこはもう割り切って、仕方ないと思いながら走りましたが。
ペースメーカーが外れてから自分で積極的なレースをしないと(2時間5分50秒を)切れないと感じたので、後半は積極的なレースをするよう心がけて走りました」
西山はこう振り返る。2時間5分50秒切りに十分な自信をもってレースに臨んだはずが、序盤の思わぬスローペースによって、西山のレースプランには狂いが生じていた。後半に入って盛り返したものの、35km以降にペースダウンし、わずか41秒届かなかった。
先月行われた大阪マラソンでは3大会連続で初マラソン日本最高記録が誕生しており、いずれの場合も、ペースメーカーが絶妙なペースメイクを見せていた(今年の大会は、予定していた30kmまでは引っ張りきれなかったが)。タラレバをあげても仕方ないが、ペースに違いがあれど、大阪に比べても、今回の東京マラソンのペースメーカーは明らかに拙劣だったと言わざるを得ない。
「レースは生物。思っている通りに進むことはない」
一方で、こんな見方もある。
「レースは生ものなので、こちらが思っている通りに進むことはないんですよね。その中で選手たちがどう考えて対応していくか、そういう力がやっぱり必要だと思います」
こう話すのは、日本陸連の高岡寿成シニアディレクターだ。