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Moto3でも空力開発競争勃発! 現代のバイクレースを席巻する空力パーツ開発のコストとマルケスの契約金はどちらが高い?
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2024/02/27 11:02
テスト走行するKTMのブラッド・ビンダー。プロトタイプとはいえ、多くの空力パーツが取り付けられたマシンのデザインは賛否両論だ
今回の移籍でレッドブルがそのままマルケスのパーソナルスポンサーになっていることを知ると、白紙の小切手を渡したという嘘のような話が本当に聞こえてくるし、「マルク、その白紙の小切手はいまどこにあるの?」なんて聞いてみたくなる。
話は戻るが、空力以外の分野でもドゥカティは次々に流行を作ってきた。そのひとつが「シェイプシフター」というもので、これは、コーナーからの立ち上がりでリアの車高を低く下げて加速につなげる(ドラッグレーサーの発想)というもの。以前はハンドルにあるレバーなどをライダーが操作していたが、現在はアクセルを開けるとフロントサスが伸び、連結しているワイヤーでリアの車高を下げるというシステムに移行している。
もちろん、車高を下げたくないときもあるので、それをキャンセルするためのスイッチもあるが、ほとんどのメーカーがドゥカティのシステムを模倣している。こうしたシステムは、ライダーにとっては煩雑な作業となり、ウインターテストではそうした操作になれることもメニューに加えられている。ライダーもなかなか大変な時代を迎えているのだ。
Moto3にも空力競争到来
いま、僕はポルトガルにいて、Moto2とMoto3のテストを取材しているが、ホンダとKTM(ガスガス、ハスクバーナ、CFモトなどはKTMのOEM)がバトルを続けているMoto3クラスで、KTMがエアロパーツに力を入れてきたことが話題になった。実際ライダーたちからも「ハンドリングが楽で、すごく乗りやすい」と好評価。効果はそれだけなく、KTMのスリップストリームに入っても風圧は単独で走っているのと同じくらいあって、スリップの効きにくい構造になっていると分析するライダーもいた。
こうした空力戦争は、いまや、バイクメーカーだけではなく、ヘルメットやレーシングスーツをつくるメーカーにも波及しており、これからはエアロを制するものが世界を制する時代になりそうだ。