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Moto3でも空力開発競争勃発! 現代のバイクレースを席巻する空力パーツ開発のコストとマルケスの契約金はどちらが高い?
posted2024/02/27 11:02
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph by
Satoshi Endo
3月上旬の開幕戦カタールGPに向けて、MotoGPクラスはマレーシアとカタールの事前テストを終えた。Moto2クラスとMoto3クラスは、現在、ポルトガルとスペインで最後の調整に挑んでいるが、どのクラスでもこの数年のタイム短縮は驚くばかりである。
グランプリを運営するドルナはこの10年、イコールコンディションを目指し、エンジン開発の規制強化と共通ECUの採用で、どのクラスも接戦を実現してきた。だが、この数年は空力戦争が激化し、タイムは一気にあがって、エアロを制するメーカーが上位につけている。
開幕戦に向けてMotoGPクラスの最後のテストとなったカタールでは、今季3連覇を目指すドゥカティのフランチェスコ・バニャイアが初の1分50秒台という驚異的な速さを見せて周囲を驚かせ、ドゥカティ、アプリリア、KTMのヨーロッパメーカーが上位を独占した。大幅なタイム向上の要因はなんだろうという問いかけに対し、多くの関係者が「タイヤの進化もあるが、ほとんどが空力だろう」と答えてくれた。
開発の主眼は空力へ
2002年に始まった頃のMotoGPクラスは、エンジン+ECUの開発、それに加えてタイヤメーカーの厳しい戦いという構図だった。ウインターテストではタイヤテストに多くの時間を割いていたが、タイヤ戦争はタイヤメーカーの1社供給になって一段落。同時にエンジン開発に多くの規制が実施され、共通ECUが採用されてからは、ウインターテストのメインメニューは、エアロパーツへと移行してきた。
コストだけを見れば、エンジン開発にかかる費用に比べて空力パーツは、コストは安く時間も早い。その理由はCFD(流体力学)ソフトウエアと3Dプリンターの進化にある。F1が圧倒的に進んでいる分野だが、バイクレースも、いまやエアロなくしてスピードをキープするのは難しくなっていることは間違いない。
現在、MotoGPクラスに参戦する5メーカーは、空力を専門とする4輪エンジニアの招致に力をいれている。だが、2輪はバイクが傾き、ライダーのライディングフォームの違いで空気の流れが変わるという基本的かつ大きな違いがある。そういう意味で、2輪の空力戦争はまだまだ発展途上であり、その中でどのメーカーよりもいち早くエアロに取り組んだドゥカティが一歩リードしていることも頷ける。