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出産→マラソン復帰でMGC出場、前田彩里32歳が明かす“母になってからの変化”「私の足、こんなに重たかったっけ」「子どものことばかり考えて…」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byNanae Suzuki
posted2024/02/18 17:02
一度出産を経験したのち、マラソンに復帰し2023年のMGCにも出場した前田彩里。出産を経て異例の復帰までを振り返る
長距離トップランナーで異例の「出産→競技復帰」
マラソンを走る女性ランナーが出産後、戻って活躍したのは、日本では例がない。海外ではシドニー五輪で高橋尚子と金メダルを争ったリディア・シモン(ルーマニア)はシドニー五輪後の2002年に出産するなど複数例がある。日本でも短距離(100mハードル)では寺田明日香が出産後、現役に戻ったケースがあるが、体への負担や消耗が大きいマラソンでは、産後すぐに復帰し活躍した選手は日本では前田が初めてだった。
昔はマラソン選手の出産、復帰は考えられもしなかったが、今は本人の気持ちと会社から理解が得られれば出産後、現役で再び走るチャンスが手に入る時代になってきた。前田は、自分の経験を他種目のアスリートや後輩にも伝えていきたいという。
結婚、出産のため競技をやめないといけないというのは…
「私は、これだけという生き方ではなく、いろんな選択ができるようになってほしいなと思うんです。結婚も出産も陸上を終えてしたいと思うならそれでいいですし、私のように競技を続けつつ結婚も出産もしたいなら、そうしたらいいと思うんです。結婚、出産のため競技をやめないといけないというのは違うと思うので、自分が求めるものをベースに会社や監督と相談しつつ、いろんな選択肢を持って自分らしく生きてほしいと思うんです。あの時ああしておけばよかったと後悔するのはイヤじゃないですか」
前田は、そう言って微笑んだ。
パリ五輪をかけたMGC
2023年1月、前田は4年ぶりのマラソンとなる大阪国際女子マラソンで復活し、日本人4位(2時間25分24秒)、総合6位でMGCの権利を獲得した。
同年10月、パリ五輪代表の出場権をかけたMGCに出場した。