炎の一筆入魂BACK NUMBER
《山本由伸2世》補強ポイントは野手にもかかわらず、カープが19歳右腕・日高暖己を人的補償で獲得した背景
posted2024/01/15 11:00
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
JIJI PRESS
野手でもなければ、即戦力として計算が立つ投手でもなかった。広島がFA移籍した西川龍馬の人的補償として獲得したのは、19歳の日高暖己だった。年明け早々の5日に発表され、11日にはマツダスタジアムで入団会見が開かれた。
日高はプロ入りからわずか1年での移籍劇を受け入れ、まるで新人入団会見のようにはにかみながら新天地への思いを口にした。
「少しずつ実感が湧いてきました。カープさんは地元に愛されている印象があります」
富島高2年秋に本格的に投手に転向し、3年夏には甲子園に導いた。その秋には同校初のプロ野球選手としてドラフト5位でオリックスから指名され、1年目の昨季は二軍で12試合に登板し、1勝1敗、防御率3.15の成績を残した。11〜12月に台湾で行われたウインターリーグでもプレーし、オリックス球団内の評価は上がっていたと聞く。
広島は人的補償で失敗なし
ルーキーイヤーを駆け抜けたばかりの移籍劇は、19歳にとって酷な気もするが、移籍が野球人生の好機となる可能性も十分ある。人的補償による移籍で、野球人生を好転させた選手だって過去にもいる。
2007年オフに石井一久の西武移籍によって、人的補償でヤクルトに加入した福地寿樹は、翌08年から2年連続で盗塁王を獲得するなど大きく飛躍した。
球団別にみると、広島は人的補償による失敗例がない。短期的な戦力補強にポイントを置かず、中期的な視野でも好選択は特出していると言える。
新井貴浩がFA移籍した07年オフは、阪神から赤松真人を獲得した。約1年後に新球場開場を控えていたこともあり、球団は俊足の外野手を求めていた。大竹寛が移籍した13年オフは、巨人から一岡竜司を獲得。最速150kmのリリーバーは、投手陣の世代交代を促すためにも適任と目された。
当時赤松は25歳、一岡は22歳と完成された選手ではなく、伸びしろのある選手を指名する傾向にあった。