NumberPREMIER ExBACK NUMBER
青学大「一色(恭志)とその他」の“狭間世代”が箱根駅伝3連覇&三冠を達成するまで…主将が明かす快挙の舞台裏「このままだと、お前邪魔だ」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byNanae Suzuki
posted2024/01/02 18:20
2017年箱根駅伝でゴールテープを切った青学大の主将・安藤悠哉。狭間の世代と呼ばれながら箱根3連覇と青学史上唯一の三冠を達成した
「確か私と誰かだけ反対したんですよ。目標が高いよって。『よく考えてみろ。去年の黄金世代でもできなかったんだぞ』と言ったけど、一色とかは『いや、三冠でしょ』と主張して結局そうなりました」
安藤はそんなちぐはぐな集団の主将になった。「主将をやりたい、チームを引っ張っていきたい」という意欲があったからだ。
安藤は愛知県内の強豪校出身だった。厳しい上下関係の中、指導者に与えられたメニューだけをこなす“ザ・体育会”な風土で高校時代を過ごした。そんな安藤が青学大に入り、ケガなどでくすぶっていた1年生の頃、原監督から言われたことがある。
「お前はまずサビを落とさないといけない。言われたことをやるだけじゃなくて、どうしたらいいのか自分で考えて行動する。能動的に動くためのサビ取りが必要だ。そうでないと絶対に上がってこられないぞ」
その年の冬には早稲田大学に進んだ同級生が箱根で走る姿からも刺激を受けた。自分を磨いて徐々にサビを落とすと結果が出始めた。2年時には箱根の10区を任され、初優勝のゴールテープを切ったのだった。
「青学って楽しそうに見えるけど実は…」
新主将としての安藤は能動的に動いた。第一歩として古い慣習を取り除くことで、世代間の一体感を高めようとした。
「青学って楽しそうに見えるけど実は練習も寮生活も厳しいんです。合宿では1年生が寝る間を惜しんで上級生の洗濯までするとか、当時はそういうのが意外に残ってたんですよ。上下関係なく楽しくやっているイメージで入学したら、しっかり縦社会だった。故障したり、練習についていけないと気にもかけてもらえないし、ちょっと甘いものを食べているだけでも『何? そんなの食べてんの』って感じで見られて、走れていない時は地獄でした」
青学って楽しそうだよねと言う他大学の選手と話をしていると、実は相手の方が縛りが緩いことに気づかされることもあった。
もちろん必要な規律は残しつつ、不要なプレッシャーは取り除くように安藤は努めた。学年リーダーを置き、各学年でミーティングを開く。次に学年リーダーを集めて、チーム全体の情報や問題点を共有した。それまでは走れていない選手は厳しく突き放す雰囲気だったのが、誰かが声かけをするなどフォローができるようになった。
「最後の箱根は絶対に走りたい」
池田は主将の仕事に真摯に取り組む安藤の姿を見て、「自分も」と感化された。