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「山下りに神はいるのか?」箱根駅伝の“超特殊区間”6区のナゾに迫る! 区間記録保持者・館澤亨次が明かす「“キツい”を“痛い”で消した」

posted2024/01/02 17:00

 
「山下りに神はいるのか?」箱根駅伝の“超特殊区間”6区のナゾに迫る! 区間記録保持者・館澤亨次が明かす「“キツい”を“痛い”で消した」<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

2020年の箱根駅伝、6区で区間新を樹立した東海大・舘澤亨次。山下りの難しさについて語った

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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Nanae Suzuki

 第100回箱根駅伝の往路は青山学院大が優勝を飾った。1月3日は復路6区の山下りからスタートする。山上りの5区ほど脚光を浴びることはないが、じつは勝負を左右する重要区間と言われている。箱根の山を下った男たちにスポットライトを当て、その証言からこの特殊区間の難しさを解き明かす。
 発売中のNumber1087・1088号掲載の[超特殊区間6区の謎]館澤亨次/舟津彰馬/小野田勇次「箱根の山下りに神はいるか」より内容を一部抜粋してお届けします。【記事全文はNumberPREMIERにてお読みいただけます】

勝負を左右する重要区間・山下りの6区

「人が走るところじゃねぇ」

「ビビったら足も気持ちも折れる」

 箱根6区を駆けた選手たちの言葉だ。

 山下りの6区は、山上りの5区の裏返し。急勾配を駆け下りる特殊区間であり、勝負を左右する重要区間とも言われている。

 ただ、5区の強者は「山の神」と讃えられるが、6区を下る最速の選手には何の称号も与えられない。レースを走り切った見返りに、血マメと水膨れ、極度の筋肉痛が出迎えてくれる。

 現在の区間記録は、2020年大会で東海大学4年生だった館澤亨次(DeNA)が出したもの。1年時に5区の山上りで「全然前に進まない。本当にきつくてしょうがない」という苦しみを知った館澤だが、6区ではまた別の地獄を味わったという。

「終盤の函嶺洞門の1km手前ぐらいで足の裏がめちゃくちゃ熱くなったんです。これは血だらけになっているか、何か起きているだろうと。終わった後に見たら、踵にすごく大きな血マメができていました」

 おそらく靴下についていた滑り止めがこすれてできたものだという。

「厚底シューズのおかげで血マメは破けずに済んだ。じゃなきゃ、過去に6区を走った人たちみたいに足が血だらけになっていたと思います」

路面凍結などの「思わぬリスク」をはらむ

 復路のスタート区間となる6区は、芦ノ湖駐車場を出発して小田原中継所までの20.8km。出だしは5区の山上りと変わらないほどの急坂を約4.5km上り、標高874mの最高点へ。そこから箱根湯本駅まで転げ落ちるように坂を下っていく。そして、最後の3kmは緩やかな平地区間が標高35mの小田原中継所まで続く。

 実は下り以上に、最初の上りと最後の平地がタイム差のつきやすいポイントでもあるという。そこにチームの順位や各選手の特性に合わせた戦略性も出てくる。

「ただ、最初の上りで脚を使いすぎるわけにはいかないので、序盤は気持ちを抑えたい。そこからは相当な下りなので、もうタイムを見る余裕もありません。僕はありがたいことにチームメイトが1kmごとに立って声をかけてくれたので助かりました」

 この年、館澤はキャプテンでありながらケガもあって調整が遅れていた。そんな館澤にとって仲間の声は、路面凍結など思わぬリスクをはらむ下りへの恐怖心も打ち消してくれた。

【次ページ】 「限界以上の力を出して走っていた」

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